2025年10月12日08時55分

ワールドミッションレポート(10月12日):モーリタニア ムーア人に届く福音

執筆者 : 石野博

モーリタニアは北アフリカの国で、大西洋に面し、モロッコ、アルジェリア、マリ、セネガルに隣接する。国土の大部分は砂漠であり、人口は約450万人程度だ。言語はアラビア語が中心で、イスラム教スンニ派が多数派の国だ。公的にキリスト教徒はほとんど認知されず、信仰を公言することは極めて難しい。

多様な民族で構成されているが、人口の30%を占めるビダン(「白いムーア人」)と、40%を占めるハラティン(「黒いムーア人」)の2つの民族グループが大部分を担う。どちらのグループも、アラブ文化とベルベル文化の影響を受けており、ほぼ全員がイスラム教徒だ。ムーア人の多くは、日常の生活の中でイスラム教を実践する熱心なムスリムで、キリスト教に触れる機会はほとんどない。しかも、彼らの文化的誇りと伝統が福音を受け入れる障害となることも多い。

この地では、文字による伝道は限定的であり、多くの人が口伝えの伝承・詩歌・伝統芸能を通して教えや伝統を受け継ぐ文化を持つ。特に女性たちの識字率は他と比べて低く、文字媒体が届きにくい。そのため、口伝、語り部、物語や詩を用いた宣教手法が極めて重要とされている。

最近では、モーリタニアではラジオ放送、モバイル伝道、口頭牧会、ビデオメッセージなどを用いた働きが徐々に増えてきている。しかし、その配布やアクセスには、政府の規制やインターネット遮断などの制限もあるため、祈りと知恵、伝道における安全確保が不可欠だ。

ムーア人の中には、ごく少数ながら主を信じている若い信徒も存在すると報告されており、こうした信者たちが家庭や共同体に福音を種まく重要な働きを担っている。ムーア人の中でキリストの証しを拡大するための奉仕者が強く求められている。

激しい抑圧的状況と民族的・社会的な壁を前にして、主に頼る働きが今まさに分岐点にある。ムーア人の女性たちが自らの価値を神に認められ、文化的な制約から解放されるように祈ろう。モーリタニアの全ての部族にキリストの愛と救いが明らかにされ、国に平安と再生の歩みが始まるように、語る者、聞く者、種をまく者全てが守られ、知恵と勇気をもって福音が宣べ伝えられるように祈っていただきたい。

■ モーリタニアの宗教人口
イスラム 99・7%
カトリック 0・14%
プロテスタント 0・08%
英国教会 0・03%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。