2025年10月10日10時20分

ワールドミッションレポート(10月10日):ベラルーシ 困難の中でも福音を伝え続ける牧師たち

執筆者 : 石野博

ベラルーシは東欧の国で、ロシアとポーランド、ウクライナなどに囲まれた内陸国家である。旧ソビエト連邦の共和国だったが1991年に独立後、政治的にはルカシェンコ大統領の長期政権により、強い中央集権が続き、言論や集会の自由が制限されることの多い国だ。そんなベラルーシで、信仰者たちは政府の監視や法令の制限、教会登録の義務、説教内容の検閲、SNSの監視、さらには牧師の逮捕といった重圧を受けつつも、福音を伝えるための使命を諦めずにいる。

スラブ福音協会(SGA)のエリック・モックはこの11年にわたり、コンパッション・ミニストリー(憐[あわ]れみの奉仕)の働きを通して数千人に福音を伝え、数百人が信仰を持つに至ったと語る。牧師たちは1つの教会だけではなく2、3の教会を兼牧することが多く、訓練を受けた新しい指導者不足の深刻な状況が続いている。

しかし、宣教者らは「大宣教命令」を胸に、混乱と規制の時代にあっても、どうにかして人々にイエス・キリストを宣べ伝え、弟子を作る働きを継続しているのだ。ある牧師は「政府の政策や規制などは私たちの関心事ではありません。私たちは目の前にある福音宣教の使命を遂行するだけです」と語った。

この地では、食糧や生活必需品を届ける支援が人々に福音を聞く機会を作り、教会の外側への奉仕が宣教の門となっている。教会登録の要件や言論の制約を注意深く順守しつつ、政府との摩擦を避けながら信徒の家族の生活を支え、社会的信頼を築く働きもある。SGAは地方の教会指導者たちを支援し、経済的な援助を通して家族を養うことが困難な牧師に対する補助的支援も行っている。

ベラルーシの牧師たちは、混乱や抑圧の中でも「われわれは自分たちの任務を続けます」と声を合わせている。彼らは世界情勢に関係なく、忠実に福音を宣べ伝え、人々に希望を届けようとしている。

政府の圧力が高まる時代にあって、信者たちが恐れに屈せず、むしろ信仰をもって前進するよう祈ろう。新しい世代の牧師たちがこの呼びかけに応え、信仰の自由が厳しく制限される中でも、知恵と勇気を持って福音を語り続けるように祈っていただきたい。

■ ベラルーシの宗教人口
正教関係 57・8%
プロテスタント 2・2%
カトリック 10・5%
無神論者 28・1%
ユダヤ教 0・5%
イスラム 0・6%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。