ネパールとインドの国境地帯の蒸し暑く貧しい辺境の地で、忘れ去られた民族の間に、神の驚くべき御業が現れている。宣教師訓練センターでの3カ月の学びを終えたばかりの宣教師たちが、アジアと北アフリカへの長期派遣に備えて10日間この地域を訪れたとき、彼らは神の驚くべき働きを目撃した。
ある村で、母親を亡くしたばかりの家族に出会った。その家族は13日間に及ぶヒンズー教の服喪儀式を行っている最中だった。通訳者は「慎重に行動してください」と注意をした。ところが息子のヴィハーン(仮名)が静かな会話の中で心を開いて語った。「これらの儀式は私に何の平安ももたらしません。ただ家族のために従っているだけです」と打ち明けたのだ。
インド人の神学生アナーニャが、神がいかに彼女を救い、信仰の火をつけたのかを分かち合うと、ヴィハーンは身を乗り出して聞き入った。彼はヒンズー教の伝統を尊重していたが、こう認めた。「私はイエスに従いたいのです。以前教会に通ったことがありますが、母が昔の生活に引き戻したのです。母が重い病気にかかったとき、3人のクリスチャンが献金し、祈ってくれました。信者たちの祈りの後、母は完全に回復したのです。私は母にイエスに従うよう勧めましたが、母は『もう治ったから必要ない』と言って拒みました。その後、母は再び病気になり、亡くなってしまったのです」
ヴィハーンは震える声で続けた。「あなたに話さなければならないことがあります。先月、新たに信仰を持った隣人の家を訪ねたとき、白い衣を着た人を見ました。誰も私を信じてくれませんでしたが、それがイエスだとすぐに分かりました。今までどれほど偶像に祈っても、それらは決して答えてくれません。でもイエスは確実に答えてくれるのです」
聖霊に動かされたヴィハーンはこう告白した。「私はイエスに人生をささげます」
この地域では、ネパール語の聖書は存在するものの、現地の人々の多くは、40~60%しか理解できていない。それは中高時代に学んだ必修科目の外国語だけを使って聖書を読むようなものだ。宣教チームは、ネパール語から各民族の母語への翻訳プロジェクトに取り組んでいる。現在、世界史で初めて、7つの異なる母語への翻訳が同時進行中だ。
長年の伝統と家族の圧力の中にあって、母語による聖書が、こうした求道者たちの心に神の言葉と希望を植え付ける。求道者たちが反対に負けずに信仰を守り抜くことができるように祈ろう。また各民族の母語による聖書翻訳が完成し、より多くの人々に神の愛が届くように祈っていただきたい。
■ ネパールの宗教人口
ヒンズー 75・0%
プロテスタント 2・9%
カトリック 0・02%
イスラム 4・4%
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