2025年9月19日14時47分

ロシアの裁判所、説教でウクライナ戦争を批判した牧師に拘禁4年の判決

ロシアの裁判所、説教でウクライナ戦争を批判した牧師に拘禁4年の判決
説教をするニコライ・ロマニウク牧師(画像:説教動画のスクリーンショット)

ロシアの裁判所は3日、ウクライナでの戦争に批判的な説教をしたプロテスタント教会の牧師に対し、4年の拘禁刑を言い渡した。

刑を宣告されたのは、ニコライ・ロマニウク牧師(63)。ロマニウク牧師は2022年9月、ロシア政府がウクライナでの戦争のために「部分動員」を発表した後の最初の日曜日に、モスクワ近郊の都市バラシハにある聖三位一体ペンテコステ教会で行った説教で、徴兵事務所の業務に対する妨害を呼びかけたとして、翌10月に逮捕された。説教はライブ配信されていた。

ロマニウク牧師はこの説教で、ウクライナでの戦争を「われわれの戦争ではない」と述べ、動員に対し否定的な見解を示したとされる。ノルウェーの人権団体「フォーラム18」(英語)によると、ロマニウク牧師はこの説教により、「ロシアの安全保障に反する活動の実施、または政府機関とその職員によるロシアの安全保障のための権限の行使を妨害することを公に呼びかけた」罪に問われた。この罪で有罪となったのは、ロマニウク牧師が初めてだという。

バラシハ市裁判所のエフゲニー・パルシン判事は、この罪によりロマニウク牧師に対し、矯正労働収容所での拘禁4年の判決を下し、3年間ウェブサイトを管理することを禁じた。ロマニウク牧師はモスクワ地方裁に控訴する予定だが、娘は「(控訴によって)根本的な変化はないことは皆よく理解している」と述べている。

ロマニウク牧師は、説教で次のように語ったとされる。

「薬物を勧められるとき、酒を勧められるとき、あるいは戦闘への召集令状を渡されるとき、これらは、同じ罪であり、同じ麻薬であり、同じサタン(からのもの)です。旧約聖書には、われわれがそれらに何らかの形で参加してよいという示唆すら見つけられないのです。これを呼びかけるのが、ウクライナの権力者であれ、米国の権力者であれ、ロシアの権力者であれ、それは問題ではありません。私はこれが、少なくとも何らかの形の教訓となってほしいと思います。これは、われわれの戦争ではありません」

「聖書に基づき平和主義を信条とするのは、われわれの権利です。われわれは戦場へ赴く者を祝福しません。強制的に徴用される者を祝福しません。ただ、神が彼らをそこから救い出されるよう祈ります。そのためのさまざまな合法的手段があるのですから」

ロマニウク牧師は法廷で、自身の説教は「聖書、すなわち旧約聖書と新約聖書に基づく、あらゆる暴力、あらゆる軍事行動、あらゆる殺害に対する、キリスト者としての個人的な姿勢」について述べたものだと主張。2日の最終陳述では、次のように述べた。

「確かに、私は説教で軍事的殺害、それも強制的な殺害に触れました。私は自分の発言を撤回しません。人間の命を奪う行為に対する私見と姿勢を示しましたが、これは聖職者としての私個人の態度です。私は説教を撤回しません」

ロマニウク牧師の家族によると、逮捕時、武装警官らはロマニウク牧師の頭部を殴打するなどしたが、当局はこれらの行為について誰も処罰していないという。また、ロマニウク牧師は高血圧や脳血管疾患など、複数の健康上の問題を抱えており、昨年12月にはラクナ梗塞(微小脳梗塞)を起こして集中治療室に入院しており、いまだ完全には回復していない状況だという。