シリアは長年の内戦で荒廃し、多くの人々が家を失い、国外に避難している。かつて政権の中枢を握ったアラウィ派も例外ではない。シーア派の一分派である彼らは、アリーを崇敬し、輪廻(りんね)を信じ、女性は天国に入れないと教える独自の宗教観を持ってきた。
かつてはアサド前大統領自身がアラウィ派出身であったことから、彼らは特権的な立場にあったが、内戦と政情不安の中で状況は一変した。今、彼らは虐殺され、故郷を追われ、レバノンに難民として逃れる者も多い。墓地に身を寄せる者さえあり、衣服以外何も持たない状態にまで落ちぶれている。
そんな絶望的状況の中で、驚くべき変化が起こっている。ホライズンズ・インターナショナルのピエール・フスニー氏は語る。「彼らは今、非常に心を開いて福音を聞いています。私は、彼らの魂の収穫期を作ることはできません。しかし御霊が働かれているときには、それに従って進むことができます」。アラウィ派の人々は虐げられ、希望を失ったが、その心は今、かつてなくイエス・キリストに向かって開かれているのだ。
現地の教会や働き人たちは、食料や衛生用品を配りながら、御言葉を携えて難民を訪ね歩いている。しかし、資源は限られており、必要は圧倒的に大きい。それでも、この苦難のただ中で「今こそ福音のチャンスだ」と信じて仕えている。人間の目には悲惨に見える状況が、多くの魂が収穫される「神の時」とされているのである。
アラウィ派はこれまで、イスラム教の中でも伝道が難しいとされてきた集団であった。しかし、今まさに御霊の風が吹き、多くの人々がイエスを求め始めている。これは歴史的な転機であり、信者にとっては大きな挑戦と使命の時だ。
豊かさや安定が失われたとき、人は真の希望を探し始める。アラウィ派の人々の渇いた心は、もはや宗教的特権や教義では満たされない。今、彼らは永遠の命を与えるキリストを求め始めている。福音は、失われた者を探し出し、罪から救い、希望のない者に新しい命と希望を与える力を持っているのだ。
シリア内戦は2011年以来続き、人口の半数以上が国内外で避難生活を送っている。特にレバノンにはシリア難民が数百万人規模で流入し、同国の人口比に対して世界最大級の難民密度を抱える。深刻な経済危機にあるレバノン社会にとって、難民支援は限界に近い。そうした背景もあり、キリスト教団体が人道支援と宣教を結び合わせて働く重要性が一層高まっている。
シリアとレバノンに散らされたアラウィ派の難民のために祈ろう。彼らの物質的な必要が満たされるだけでなく、真の平安と救いを与える主イエスを見いだすことができるように。また、現地で仕える働き人たちが疲れ果てることなく、必要なリソースが与えられ、御霊の導きに従って収穫の働きを担い続けるように祈っていただきたい。
■ シリアの宗教人口 ※内戦前統計
イスラム教 90%
プロテスタント 0・2%
カトリック 3・1%
正教会系 3・0%
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