2025年9月8日08時06分

ワールドミッションレポート(9月8日):南アフリカ せめぎ合う真の福音と繁栄の福音

執筆者 : 石野博

南アフリカは美しい国土と豊かな天然資源を持ちながら、深刻な社会問題を抱える国でもある。2025年初頭にはアフリカで最も高い犯罪率を記録し、経済格差と貧困問題は悪化している。こうした中で、教会は「繁栄の福音」と呼ばれる誤った教えとも戦っている。

繁栄の神学は1980年代にアフリカ全土に広まり、「キリストを信じれば必ず肉体の健康と経済的繁栄を得られる」と説く。しかしこれは聖書の真理を歪め、多くの人々を偽りの希望で欺いてきた。トランス・ワールド・ラジオ・グローバルのウナティ・シソレ氏はこう警告する。「繁栄の福音は、キリストにあって苦難の中で経験する喜びや特権を教えません。人々が困難に直面すると、『約束されたはずの健康も富もない』と失望し、キリストから離れてしまうのです」

その破壊的影響は大きい。繁栄の説教者たちは聖書を文脈から切り離して都合よく解釈し、「うまくいかないのは信仰や献金が足りないからだ」と人々を責め立て、私腹を肥やすことも少なくない。これは神と人との関係を根本から誤解させる偽りの福音である。

しかし希望も残されている。シソレ氏は語る。「純粋な福音を語る教会も確かに存在します。福音は神から何かを得ることではなく、私たちの人生を神にささげることでもあるのです」。南アフリカには、真理を守ろうとする群れが確かにある。さらに、新しいラジオ番組「ミッション66」が始まり、聖書を章ごとに会話形式で学びながら、真の福音を広めている。シソレ氏は「神の御言葉こそ私たちの日々の糧であり、聖霊の力によって心を変えるのです」と強調する。

貧困に苦しむ人々にとって、繁栄の教えは魅力的に映る。しかしそれは信仰を歪め、教会の証しを損なう。もし繁栄の福音が真実なら、迫害や貧しさの中で信仰を守る人々の歩みは意味を失ってしまうだろう。むしろ福音の真実は「それでも信仰を捨てない」姿に表される。真の福音は物質的祝福ではなく、罪からの救いと永遠の命の約束なのである。

南アフリカの信者と求道者の上に、御言葉の真理が勝利し、物質的繁栄の誘惑に惑わされることがないように祈っていただきたい。また、「ミッション66」を通じて多くの人々が真の繁栄であるキリストに出会い、永遠の命の豊かさに生きるよう祈っていただきたい。

■ 南アフリカの宗教人口
プロテスタント 68・7%
カトリック 6・0%
正教 0・1%
イスラム 1・7%
ユダヤ教 0・15%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。