2025年8月18日22時13分

世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出

世界福音同盟、新総主事にアラブ系イスラエル人弁護士を選出
世界福音同盟(WEA)の新総主事に選出されたブトロス・マンスール氏(写真:WEA)

世界福音同盟(WEA)は18日、アラブ系イスラエル人弁護士のブトロス・マンスール氏(59)を、新総主事兼最高責任者(CEO)に選出したと発表した。10月に韓国・ソウルで開催される総会で、正式に就任する。

総主事は、WEAの実務的な総責任者で任期は5年。前任者のトーマス・シルマッハー氏が昨年3月、健康上の理由などで任期約2年を残して辞任したことで、1年以上空席だった。現在は、国際理事会(IC)議長のグッドウィル・シャナ氏が、執行委員長として暫定的に総主事業務を行っている。

3月に公募が始まり、応募のあった25人の候補者の中から、選考委員会が最終候補者として3人を選考。3人への面接を含む会合で、ICが投票によりマンスール氏を選出した。

シャナ氏はマンスール氏について、「地元の草の根の教会と地域社会の活動に根ざした、国レベル、地域レベルの福音伝道の経験」を持っていると指摘。「彼は謙虚さと奉仕の心を示してきました。それらは、サーバントリーダーシップをWEAにもたらし、協働的な取り組みを強化してくれるでしょう。知恵と勇気をもって、WEAを、私たちの共通のビジョンと使命の次のステージへと導いてくれると信じています」と述べ、期待を示した。

マンスール氏は、自身を信頼し選出したICに感謝を示すとともに、「重責を痛感しています」とコメント。「神の恵みにより、私は他の人々と共に、私たちの一致を妨げるあらゆる障害を取り除くために絶え間なく努力します」と述べ、開催まで2カ月余りとなった総会に向け、世界各国の関係者と関係構築に取り組む姿勢を示した。

マンスール氏は1965年、イエス・キリストが幼少期を過ごしたことで知られるイスラエル北部の都市ナザレ生まれ。自身は幼少期をエルサレム、英国のオックスフォード、ナザレで過ごし、高校時代に信仰に導かれた。

ナザレにある福音派の小中高一貫校「ナザレ・バプテスト学校」を卒業後、91年エルサレムのヘブライ大学で法学の学士号を取得。93年イスラエル弁護士会に入会し、北西部の都市ハイファとナザレで弁護士として活動した。

2009年ハイファ大学で、非営利組織を専門とする経営学修士号(MBA)を取得。14年からナザレ・バプテスト学校の運営責任者を務めている。1996年にはナザレで地域教会を共同設立し、2001年に長老に任職されている。

教会やキリスト教団体で指導的役割を歴任し、WEAの加盟団体の一つであるイスラエル福音主義教会連盟会長のほか、ヨルダン聖地福音主義連盟同盟総主事兼議長、イスラエル・キリスト教学校実行委員会委員、ナザレの野外博物館「ナザレ村」副議長、キリスト教法曹ネットワーク「アドボケイツ・インターナショナル」国際理事、「イスラエルとパレスチナの和解のためのローザンヌ・イニシアチブ」共同会長などを務めてきた。

アラビア語、ヘブライ語、英語で講演・執筆活動を行っており、米福音派誌「クリスチャニティー・トゥデイ」や、イスラエルの有力紙「ハアレツ」にも寄稿している。著書に『When Your Neighbor Is the Savior(隣人が救い主であるとき)』と『Looking From the Precipice(絶壁からの眼差し)』がある。

ブトロスは、ペトロのアラビア語名。ナザレ在住で、妻はナザレ・バプテスト学校の教育カウンセラーであるアビールさん。2人の間には、成人した子どもが3人いる。

クリスチャン・デイリー・インターナショナル(英語)によると、WEAの総主事にアラブ系イスラエル人が選ばれるのは初めて。

WEAは、信者が世界で6億人を超えるとされるキリスト教プロテスタントの福音派を代表する世界機関。1846年にロンドンで発足し、来年創立180年を迎える。現在は、国レベルの福音同盟140以上、アジアや欧州など複数国にまたがる地域レベルの福音同盟9つのほか、さまざまな福音派の団体が加盟している。