2025年8月18日18時25分

福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進
ベネズエラ北東部スクレ州の州都クマナで行われた「マーチ・フォー・ジーザス」の集会の様子=2日(写真:中南米福音同盟=AEL)

南米のベネズエラで2日、「マーチ・フォー・ジーザス(イエスの行進)」が開催され、多くの福音派クリスチャンが、全国各地で行われた行進に参加した。

ベネズエラでは1日、ニコラス・マドゥロ大統領が、8月第1土曜日を「全国マーチ・フォー・ジーザスの日」とする大統領令に署名。国の正式な記念日として定められた。この構想は、マドゥロ氏が今年初めに表明。その後、国内では、政治利用だなどとして論争が巻き起こったが、行進は教団・教派の垣根を超えた霊的・文化的・社会的な表明の機会として行われた。

中南米福音同盟(AEL、スペイン語)によると、行進は全国250カ所で同時開催され、400万人以上が参加。さまざまな国籍・教団・教派の信者らが、横断幕や旗を掲げたり、テーマ入りのTシャツを着たりして、イエス・キリストを主であり、救い主として宣言しながら行進した。行進が行われた通りには、賛美や祈り、一致を呼びかける声が響き渡った。

首都カラカスでは、東西2カ所の拠点から大規模な行進が始まり、最終的にリベルタドール大通りで合流。そこで野外礼拝が行われ、聖書のメッセージが伝えられるとともに、ベネズエラのための祈りがささげられた。

各地の教会ネットワークやキリスト教の諸団体が運営を担い、若者や音楽家、牧師、地域リーダーらがボランティアとして協力した。

中でも参加者が多かったのは、北東部のアンソアテギ州。参加者は州都バルセロナのほか、レチェリア、プエルトラクルスなど、州内の主要都市から歩いて集まり、地元のスポーツ複合施設に到着。家族連れや子ども、若者、高齢者、教会指導者、さらには地元当局者も参加し、平和で祝祭的な雰囲気の中、霊的な喜びに満ちた一日を過ごした。行進は都市部だけでなく農村部でも行われ、その様子はSNS(スペイン語)で広く共有された。

北東部スクレ州の州都クマナでは、ベネズエラ福音同盟(CEV)の総主事であるホセ・ピニェロ牧師が、メッセージ(スペイン語)を取り次ぎ、神の恵みと行進の意義について語った。

「私たちは、主の恵みによって贖(あがな)われたクリスチャンとして、ここにいます。信仰の兄弟姉妹からの呼びかけを信頼し、この全国的な行事が深く福音的な動機から生まれたものだと確信しています。この地は希望を求めて叫んでいるのです」

「私たちがここにいるのは、自分がそれにふさわしいからではありません。恵みによってです。教団・教派を超え、他の何にも関係なく、私たちは一つにされています。私たちは赦(ゆる)しから来ました。希望から来ました。平和から来ました」

また、行進はキリストを中心としたものであることを改めて強調して、次のように述べた。

「私たちは自分の教会や教団・教派の名の下に行進しているのではありません。一人の方のために行進しているのです。イエス・キリストのためにです。彼は死に打ち勝ち、3日目によみがえり、悪に勝利されたのです」

最後には、行進が表面的な催しとして誤解されるべきではないとして、次のように述べた。

「この行進はショーではありません。喜びをもってイエス・キリストを祝い、ベネズエラの街頭でその喜びを表す場です。それこそが私たちがここに来た理由です」

マドゥロ氏は、インスタグラムへの投稿(スペイン語)で、国内各地で行われた行進の影響力を強調。行進は「愛と祈り、一致の美しい表現」だとし、ベネズエラ国民のキリスト教信仰の明確な表明だと述べた。

別の投稿(スペイン語)では、「あなた(イエス)の愛、正義、慈愛、祝福が、私たちの祖国を守り、保護し、光を照らしてくださいますように。そして、謙遜な人々、虐げられた人々、祝福された人々の勝利へと前進させてくださいますように」と祈り求め、「私たちは神の民です」と強調した。

「全国マーチ・フォー・ジーザスの日」の制定は、近年、教会数・影響力ともに増しているベネズエラの福音派と国の関係を示すものだとして受け止められている。

一方で、政府が行進の運営に関与していることに対して批判の声も出ている。

ベネズエラのマーチ・フォー・ジーザスの創始者の一人で、現在米国に亡命しているアリストテレス・ロペス牧師は、マドゥロ氏が国の記念日とすることを表明した際、「政府が行進を政治利用することを許している」と非難。従来は10月に開催されていたのが、8月に変更されたのも政府の意向だとして、「(開催日の変更が)事前に決められていた証拠がある」と主張するなどしていた。

これに対し、ピニェロ氏は、キリスト教メディア「ディアリオ・クリスティアーノ」(スペイン語)の取材に、「この行事が政治利用されているとか、政府に操作されているというのは、事実ではありません。もし行進が政治利用されているのであれば、私たちは行進を行わなかったでしょう」と反論し、次のように述べた。

「行進するか、しないかという、全ての人の権利は尊重されています。私たちは、誰かを強制することはありません。私が明確にしているのは、私たちはイエスのために行進するのであって、政府のためではないということです」

行進の写真や動画は、参加者の証言とともに、国内メディアやSNSなどで広く拡散された。参加者の中には、深い霊的刷新を経験したと語る人や、制約なく公に信仰を表明する機会を与えられたことに感謝する人がおり、行進が敬意と一致、希望に満ちた雰囲気で行われたと評価する声も多かった。