2025年8月12日07時01分

ワールドミッションレポート(8月12日):アルメニアのために祈ろう

執筆者 : 石野博

アルメニアは南コーカサス地域に位置し、ジョージア、アゼルバイジャン、イラン、トルコと国境を接している。古代から文明のクロスロードとして栄えたが、その地理的条件の故に、長い歴史の中で侵略や支配、戦争の舞台となってきた。

特に1915〜17年、第一次世界大戦下でオスマン帝国によって最大150万人のアルメニア人が犠牲となったとされるジェノサイドは、民族の記憶に消えない傷を残した。この悲劇は世界的にも記憶され、今なおトルコとの関係正常化を阻む大きな要因となっている。

近年では、ナゴルノ=カラバフを巡るアゼルバイジャンとの紛争が1988〜94年と2020〜23年に勃発し、多くの命と住まいが失われた。2023年の戦闘終結後、同地域からアルメニア人が事実上一掃され、かつてのジェノサイドを想起させるとして国際的な非難を招いた。一方、長年頼みにしてきたロシアの後ろ盾は薄れ、国際社会の関心もウクライナや中東情勢に向かい、アルメニアは孤立感を深めている。

歴史の激流に翻弄(ほんろう)されてきたアルメニアだが、この国は世界で最初にキリスト教を国教とした国(西暦301年)であり、1700年以上のキリスト教信仰の歴史を持つ。幾度もの迫害や異教支配を受けながらも、アルメニア教会は信仰を守り抜き、文化や文字、礼拝の伝統を後世に伝えてきた。この霊的遺産は、国民のアイデンティティーと深く結び付いている。

またアルメニア人の人口は、国内在住約300万人に対して、国外在住のディアスポラのアルメニア人は約800万人もいる。彼らは中東、北米、欧州など各地で活躍し、特に福音派教会での活動は旺盛である。近年、こうした海外の信徒たちが自らの信仰的遺産の価値と宣教への使命を再認識し、母国や周辺地域への支援や伝道に取り組み始めている。

現在のアルメニアには、平和構築と隣国との和解という大きな課題が横たわっている。過去の悲劇を繰り返さないために、歴史の傷と恐れから解放され、主の赦(ゆる)しの力によって赦しを学び、地域に福音の光と祝福をもたらすことが求められている。

アルメニアに真の平和と信仰の復興、救霊の御業が起こされるように祈っていただきたい。

■ アルメニアの宗教人口
正教関係 57・8%
プロテスタント 2・2%
カトリック 10・5%
無神論者 28・1%
ユダヤ教 0・5%
イスラム 0・6%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。