2025年8月7日13時10分

日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及
日本キリスト教協議会(NCC)が発表した「平和メッセージ」

日本キリスト教協議会(NCC)は1日、「平和メッセージ」を発表した。戦後80年の節目のメッセージで、「日本の植民地支配と戦争加害の歴史的責任にしっかりと向き合い、記憶から出発する平和への道をあらためて確認したい」として、大きく7つの項目について述べている。

最初の「加害の歴史に向き合う」の項目では、日本が台湾や朝鮮、中国の一部などを占領し、多くの人命を奪ったことについて、「植民地支配の構造の一環」だったとし、記憶されるべき事実だとした。また、当時の日本のキリスト者の多くも植民地支配や戦争に加担したと指摘。「とりわけ、戦争を支えた天皇制と国家神道を容認・支持し、また、それに同調しない仲間を切り捨てたことは、神の前に悔い改め、批判的に省みなければならない」とした。

「今、進行する戦争と軍事主義」の項目では、現在も世界各地で戦争と占領が続き、人命が無残に踏みにじられていると指摘。特に2021年に国軍がクーデターを起こしたミャンマーの状況に言及した。一方、日本では、防衛費の増額や敵基地攻撃能力の保有、沖縄や南西諸島の「軍事化」が進んでいると主張。これらは「日本の平和憲法の根幹を揺るがす動き」だとし、こうした動きに対しては「否」の声を挙げるとした。

「歴史の否定と排除の論理に抗して」の項目では、戦争責任を否定し、歴史を歪める動きが加速しているとして、懸念を示した。また、外国人や難民に対するヘイトも広がっているとし、7月の参議院選挙で躍進した参政党が掲げた「日本人ファースト」に言及するなどした。その上で、「排外主義とナショナリズムは、分断と不信をあおって共生社会を破壊し、人々の心を束ねて戦争へと向かわせます」と警鐘を鳴らした。

メッセージではこの他、家父長制的価値観などによる差別や経済格差、環境破壊にも言及した。環境破壊に関する内容では、「戦前は『軍事力』、戦後は『経済力』という『力』に惹(ひ)かれ、神の創造されたこの美しい世界に『仕える者』になりえなかった」などとして、反省を表明。脱原発と非核化に取り組みつつ、被造世界の修復と保全に向けて生き方を変革していくとした。

最後の「平和をつくり出す者として」の項目では、「平和は、記憶の継承とともに育まれ、差別と搾取に抗する勇気と、日々の生活の中に根を下ろす小さな実践の積み重ねによってつくられ、守られていきます」と強調。戦争を含め、あらゆる暴力を容認せず、権力関係を作り出す価値観やシステムにも抵抗し、共生の未来へと粘り強く歩みを進めていくと述べた。その上で、それこそが「『公正を行い、慈しみを愛し、へりくだって神と共に生きよ』との呼びかけに応えることになる」とした。

メッセージは、7月17日に開催された第6回常任議会で承認されたもので、吉高叶(かのう)議長と大嶋果織総幹事の連名で出された。

今年は戦後80年であることから、日本福音同盟(JEA)や日本カトリック司教団、日本基督教団もそれぞれ、声明やメッセージ、祈りを発表している。