
中国北部の山西省臨汾(りんふん)市の裁判所は6月20日、2つの教会の牧師や信者らに有罪判決を下した。いずれも「家の教会」と呼ばれる政府が認めていないプロテスタント教会で、最大で拘禁9年2カ月、罰金10万元(約200万円)が言い渡された。
有罪とされたのは、臨汾聖約家園教会の牧師ら3人と臨汾金灯堂教会の信者10人。臨汾聖約家園教会の牧師である李潔(リ・ジエ)氏と長老の韓暁棟(ハン・シャオドン)氏は拘禁3年8月と罰金3万元(約60万円)、長老の王強(ワン・チャン)氏は拘禁1年11月と罰金2万元(約40万円)を、それぞれ言い渡された。
国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、李、韓両氏は2022年8月に、王氏は同年11月にそれぞれ拘束された。3人は23年5月、「犯罪集団」を組織し、「違法な収入」を得たとして、詐欺罪で起訴された。しかし、裁判が始まったのは今年5月8日になってからだった。
裁判は厳重な警備の下、非公開で行われ、李氏の妻と母親、2人の子どもは、裁判所の入り口付近で強制的に排除されたという。
CSWが情報筋の話として伝えたところによると、3人の弁護団は、3人が裁判所のセキュリティーチェックを通過し、携帯電話やノートパソコンを裁判所に持ち込まないことに同意すれば、刑期は3年を超えないと言われていたという。しかし最終的に、李、韓両氏の刑期はそれを上回るものになった。
一方、王氏は、昨年9月30日から指定場所での「居住監視」に置かれ、今年3月に解かれていた。言い渡された刑期は、これまでの拘束期間を反映したもので、再収監されることはないという。
臨汾聖約家園教会は6月23日、判決を非難する声明(中国語)を発表。献金は聖書の教えに基づいたもので詐欺ではないとし、次のように述べた。
「判決が下されましたが、私たちはこの不当な判決に同意しません。私たちの兄弟たちは詐欺を犯しておらず、教会の献金は詐欺ではありません。私たちの教会は引き続き家の教会として、キリストを教会の唯一の頭とし、政教分離の原則に従います。私たちは、李潔、韓暁棟、王強の各氏が正義のために苦難を受け、主と共に十字架を負う覚悟で奉仕してきたことを高く評価します。私たちは、この判決の結果を主からのものとして、感謝と従順の心で受け入れます」
臨汾聖約家園教会を巡っては昨年末、弁護士や教会指導者らが共同で、家の教会の献金を犯罪と見なす当局に抗議し、非難する声明を発表していた(関連記事:中国、家の教会に「詐欺」のレッテル貼り迫害 弁護士や教会指導者らが共同で非難声明)。
臨汾金灯堂教会の信者10人も6月20日、有罪判決を受け、同じく詐欺罪で拘禁刑と罰金刑を言い渡された。10人は21年8月に拘束され、中心的な人物だった李双平(リー・シュアンピン)氏は、最も重い拘禁9年2月、罰金10万元(約200万円)を言い渡された。同教会の創立者で牧師の王暁光(ワン・シャオグアン)氏と妻の楊栄麗(ヤン・ロンリー)氏の裁判は別に行われており、より重刑となる可能性がある。
CSWのマービン・トーマス創立会長は、これらの判決について、「中国の複雑な司法制度と手続きが、いかに容易に操作され得るかを浮き彫りにしている」と指摘。非公開の裁判と法的支援に対する制限が、「中国の司法手続きの公正性について深刻な疑問を投げかけている」と述べた。
その上で、「CSWは、これらの不当な判決と、中国による宗教・信条の自由の犯罪化を非難します。私たちは中国当局に対し、判決を直ちに撤回し、今後は透明かつ公正で、開かれた法的手続きを確保するよう求めます」とした。