2025年7月5日11時52分

ワールドミッションレポート(7月5日):コロンビア コカ農家から最前線の福音伝道者へ

執筆者 : 石野博

ビクターはかつて、コロンビア奥地でコカの栽培に従事していた。コカはコカインの原料であり、この地域では長年にわたり反政府武装勢力や麻薬カルテルによって支配されてきた。しかし、かつてコカを育てていたビクターであったが、彼は今、同じ土地で、命懸けで教会を開拓し、福音を伝えているのだ。

彼の教会は銃撃を受け、彼自身も度重なる命に関わる脅迫を受けてきた。家族も日々、危険と隣り合わせの生活を余儀なくされている。それでもビクターはその歩みを止めない。「私たちは、たとえ神が働いておられる姿が見えなくとも、神が常に良い方であると信じることを学んできました」と彼は語る。

ビクターの歩みは、妻イエレイシーの絶え間ない祈りから始まった。ビクターは、キリストに人生を明け渡した後、一度も訪れたことのない村の夢を見た。数日後、夢に出てきたその村から信者である一人の男が訪れ、「私たちに福音を伝えてほしい」と求めてきた。ビクターは、これが神からの召命であると確信し、村に向かったのである。

ビクターが家族と共にその村に移り住むと、その村はやがて大きく変えられた。以前は盛んだった酒にまつわる乱痴気騒ぎが姿を消し、多くの若者たちが信仰に入った。しかし同時に、地元で「友達」と呼ばれる武装勢力の反発を受け、教会は銃撃される事態に陥った。ある時は、何かの理由でビクターの出発が遅れたため、間一髪で命拾いしたこともあった。

彼が伝道に出かけるたびに、妻のイエレイシーは断食し、祈り続ける。2人の間には5人の子どもがおり、父の不在は子どもたちの心にも影を落としているが、12歳の娘キャロルにとって、それは祈りの機会となっている。キャロルは「お父さんに何か起こらないか心配で、私は毎日お父さんのために祈っているわ」と語る。

立ち塞がる困難にもかかわらず、ビクターは決して立ち止まらない。「神が召されるなら、私たちは従うだけだ。私たちはもう20年もこの霊的な戦いを続けている。肉の武器ではなく、ひざまずいて祈るという、霊的な武器によって戦っているのです」と彼は力強く語る。

コロンビアは、長年にわたり反政府武装組織FARC(コロンビア革命軍)などによる内戦と麻薬取引の温床となってきた。2016年の和平合意以降も、治安は不安定なままであり、多くの地域では教会およびキリスト信者が武装勢力や犯罪組織からの迫害に苦しんでいる。特に、福音派教会や牧師たちは、平和と変革のメッセージを伝えることが、反政府勢力の利権を脅かすと見なされ、標的にされやすいのだ。

ビクターと彼の家族は、信仰故に命を危険にさらしている。彼らの信仰と献身、伝道のために、また、コロンビアの平和と救霊のために祈っていただきたい。

■ コロンビアの宗教人口
カトリック 82・1%
プロテスタント 7・8%
英国教会 0・02%
土着の宗教 2・9%

◇

石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。