
カトリック教会の聖人というとき、どのような人物を思い浮かべるだろうか。塔の上で一生を過ごした禁欲主義者だろうか。それとも、聖母マリアやキリストの幻を見たごく普通の女性たちだろうか。あるいは、使徒たちだろうか。
カトリック教会で最も新しく聖人と認められる見通しの一人は、信じられないかもしれないが、ミレニアル世代(1980年代前半~90年代半ば生まれ)のプログラマーだ。
カルロ・アクティスさんは91年、裕福なイタリア人の家族の下、ロンドンで生まれた。その後、家族でミラノに移住。7歳で初聖体を受け、定期的にミサやその他のカトリック教会の行事に参加していた。
アクティスさんは普通の少年だったが、プログラミングやインターネットに関する自身の知識と関心を生かし、カトリック教会が認めた100件を超える聖体に関する奇跡をまとめたウェブサイト(英語他)などを作成した。
しかし、残念ながら、アクティスさんは急性白血病と診断され、2006年に15歳で亡くなった。遺言により、遺体は彼が崇敬し、前ローマ教皇の名の由来ともなったアッシジの聖フランシスコにちなんで、イタリア中部アッシジの墓地に埋葬された。
死後数年がたつと、友人たちと数人の神父たちが、アクティスさんの列聖に向けた働きかけを始めた。
カトリック教会は18年、その高潔な生涯を認め、アクティスさんに「尊者」の敬称を授与。翌19年、アクティスさんの遺体はアッシジのサンタ・マリア・マッジョーレ教会に移された。
20年には、すい臓に先天性の奇形があったブラジルの男の子が、アクティスさんへの祈りによって奇跡的に治癒したことが認められ、「福者」に列せられた。この男の子の治癒については、いまだに科学的な説明が見つかっていないという。
その後、フィレンツェ留学中に自転車事故で重度の頭部外傷を負ったコスタリカの女子学生が、アクティスさんの墓前で母親が祈った後、完全に治癒され、24年に2つ目の奇跡として認められた。
アクティスさんは、今年4月27日に列聖式が行われ、正式に「聖人」に列せられる予定だった。しかし、前教皇フランシスコの死去により、列聖式は延期され、新たな日程は現在のところ、未定となっている。
ポルトガルのジャシント・ベント神父はAP通信(英語)の取材に対し、次のように語っている。
「この聖人は驚くべき存在です。彼は若いので、人々に親しい模範として提示できます。そう、誰もが聖人になり得るのです」