2025年5月29日11時15分

ワールドミッションレポート(5月29日):ケニア 水浄化プロジェクト、アフリカ最大のスラムを変革し、大いなる救霊に(1)

執筆者 : 石野博

ケニアの首都ナイロビに位置するキベラは、アフリカで最大規模のスラム街であり、数十万人が劣悪な環境の中で暮らしている。治安の悪さ、貧困、ギャングの暴力が渦巻き、清潔な水もトイレもほとんどないこの場所は、長年にわたり「世界で最も過酷な居住地の一つ」と評価されてきた。

この町における居住環境は、想像を絶する。多くの住居は、およそ2・4メートル四方のスペースしかなく、壁は泥、屋根はトタン板、床は粗末な土やコンクリートだ。生活空間にはトイレもキッチンもなく、眠るだけの場所があるのみだ。公式なデータでは、およそ40万人以上の住民に対して、公共トイレの設置数はわずか78基にとどまっている。

水の問題も深刻だ。住民たちは日常的に、水を運ぶために並び、金属製の携行缶やポリタンクを手に順番を待つ。水の供給源が安全であっても、そこから各家庭に届くまでの配管が老朽化しており、違法接続や漏水により、不衛生な水へと変わってしまうのだ。

下水が漏れ出した箇所から配管内に逆流し、大腸菌やコレラ、赤痢などの原因となる病原菌で水が汚染されているのだ。キベラの至る所にはゴミが散乱しており、下水道設備がないため、人間の排泄物がそのまま道路に放置され、それが水に流れ込むのだ。

そんな最悪な衛生環境のキベラに2017年、米テキサス州に拠点を持つ「バケット・ミニストリー」の創設者であるクリス・ベス氏が初めて訪れた。その劣悪な状況は彼の心を強く打った。「当時は一軒として清潔な水を使えている家がありませんでした」と彼は振り返る。

深刻な状況を受け、ベス氏は緊急の対策を講じるため、60人規模のチームを派遣した。チームは4カ月間かけて全スラムを歩き回り、全ての住宅を一軒一軒ノックして、実態を調査した。その結果、キベラ内にはおよそ8万1千軒もの粗末な家屋が存在し、合計40万人以上が暮らしていることが分かった。

水は生命の源であるはずだが、この町では逆に水が原因で人々の健康と命が脅かされていたのだ。バケット・ミニストリーはこの深刻な現実に立ち向かうため、画期的なアプローチを開始することになる。(続く)

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■ ケニアの宗教人口
プロテスタント 56・8%
カトリック 21・5%
英国教会 8・9%
正教 0・8%
土着宗教 7・2%
イスラム 8・3%
ヒンズー 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。