2025年1月19日19時20分

ワールドミッションレポート(1月19日):聖書翻訳の記念碑的な達成

執筆者 : 石野博

世界中で聖書の翻訳がない言語が、歴史上初めて1千を下回った。

2024年9月1日時点で、聖書が一節も翻訳されていない言語が、わずか985言語だけであることが確認された。これは2930万人話者に相当し、世界人口に対してわずか1%未満なのだ。しかし、これらの人々は最も隔絶されており、到達するのが極めて難しいグループであることが多いのである。

3年前の未翻訳言語が1892だったことを考えるなら、未翻訳言語への達成スピードが飛躍的に向上していることが分かる。特にアフリカでは大きな進展があり、残りの言語の多くは、キリスト教になじみがなく閉ざされた地域であるアジアに集中しているという。

ウィクリフ聖書翻訳協会のアンケ・プランジ・ファン・ウェル氏は、この統計は全体像の一部しか物語っていないと強調する。「本当の問題は、地域社会が聖書を積極的に使用しているかどうか、そして地元の教会が聖書の配布と適用に役割を果たしているかどうかなのです。聖書が禁止されていたり知られていない地域では、課題は計り知れません」

世界的な聖書翻訳運動は「ビジョン2025」の下、2025年までに全ての言語で翻訳プロジェクトを開始することを目指している(2024年9月24日の当レポート参照)。翻訳の進歩は、ほとんどの大陸で見られるが、迫害を受けている地域では、独特なハードルが横たわっている。「地元のクリスチャンが翻訳活動に貢献するのは危険です」とプランジ氏は言う。「リスクがあるにもかかわらず、多くの人が今でもひそかに集まり、心に響く母国語で神の言葉を聴くことを切望しています」

また、特筆すべきはテクノロジーの進歩だ。これによって翻訳の取り組みが強力に加速しているのだ。ナイジェリアではこの3年で、聖書のない言語の数が178から22になり、大幅に減少した。翻訳者のダニエル・バラ牧師は、翻訳ソフトウェアの影響を強調して、こう言う。「以前のペンと紙の方法よりも速く、正確です。しかし、多くのコミュニティーにとって、コンピューターリテラシーのトレーニングは依然として大きな課題です」

聖書全体の翻訳でなく部分的な翻訳でも、未翻訳とは比べものにならないほどの大きな違いを生み出している。ナイジェリアで農業を営むマガギは、仕事をしながら携帯電話で聖書の一節を聞いている。「自分の言語で神の言葉を聞くことで、信仰が強まります。日ごとに神に近づくことができるのです」と彼は語る。オーディオ聖書は、識字率の低いコミュニティーでは特に影響力があり、新しく強力な方法で、神の言葉をより一層身近なものとしているのだ。

飛躍的な進歩があったものの、全ての共同体が自分の母国語で聖書を利用できるようになるためには、まだ多くの作業が残っているというのが率直な評価だろう。今でもこのビジョンと使命は、緊急性と希望をもって継続されている。

テクノロジーの進歩が、神の言葉を愛する奉仕者たちを効果的に助けている。全ての人に開かれなければならない神の言葉が、なお力強く勢いを増して翻訳され、ヴィジョン2025の目標が全て達成されるように祈っていただきたい。

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。