2025年1月11日10時23分

ワールドミッションレポート(1月11日):ケニア 愛と憐れみ、善意の輪が生み出す考えられない波紋(1)

執筆者 : 石野博

福音派の慈善活動団体「ワールド・ビジョン」が提供する子どものための支援プログラム「チャイルド・スポンサーシップ」が、考えられないような豊かな実を結んだ物語を紹介したい。

ケニアのマサイ族の少年は、チャイルド・スポンサーシップを通して教育の機会に恵まれた。なんとその彼が国の指導的な地位にあるケニア英国国教会大主教になったのだ。これはかつて、泥、木の枝、わら、牛ふんで作られた質素な家で育ったマサイ族の少年が、チャイルド・スポンサーシップを通じて、いかにしてケニア大統領の公邸の隣にあるナイロビ大司教公邸に住む祖国の霊的指導者になったかの物語だ。

ジャクソンは1964年に生まれ、人里離れたナロク郡の田舎で育った。彼の父親は多くの牛の群れを所有する裕福なマサイ族の男性だったが、悲しいことに、ジャクソンがまだ4歳の時に帰らぬ人となってしまった。ところが、彼の年上の異母兄弟は、跡目相続の野心から、ジャクソンと母親、姉妹らを土地から追い出したのだ。

幼いジャクソンには、この異母兄弟の無慈悲な仕打ちに、全く太刀打ちできなかった。土地から追い出された一家は不遇な生活を強いられた。そのためジャクソンは小さい頃から、獰猛で危険な象やライオンを避けて、牧畜する術を学ばなければならなかったのである。

そんなある日、ワールド・ビジョンのスタッフが彼の村を訪れ、チャイルド・スポンサーシップを提供するために親のいない子どもたちに呼びかけた。しかし当初のジャクソンは、この機会に手を挙げなかった。彼は、父親がいないことを恥ずかしく思っていたからだ。しかし結局、ジャクソンはプログラムに応募するために写真を撮ることに決めたのだ。

ジャクソンがスポンサーシップの対象になると、彼は人生で初めての靴を履き、新品のユニフォームに袖を通した。このプログラムを通じて、ジャクソンは教育を受けることができたのだ。そこで彼は、読書への愛に目覚めた。彼の成績は優秀で、教師は高校に進学して、さらなる高等教育を受けるようにとジャクソンに勧めたのである。

ジャクソンはこう話す。「私は、どうしたら成長して強い戦士になり、母や姉妹たちを先祖伝来の土地と故郷に連れ戻せるだろうかと考えていました。私たちを追い出した異母兄弟に復讐したいと思っていたのです。しかし教育は、一人の人間の人生と、その世界観全体を劇的に変えることができるのです。そうです、私の世界観は変わりました。これこそが、私がキリスト信者になったきっかけなのです。私は聖書を読み、理解しました。そして教会が私を拾い上げ、私を訓練してくれたのです。今日、私が大司教になったのは、まさにそのおかげです」(続く)

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■ ケニアの宗教人口
プロテスタント 56・8%
カトリック 21・5%
英国教会 8・9%
正教 0・8%
土着宗教 7・2%
イスラム 8・3%
ヒンズー 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。