2024年8月5日12時10分

ワールドミッションレポート(8月5日):シリア イスラム教徒のタクシードライバー、キリスト教徒を乗せて人生の新たな道を案内される(2)

執筆者 : 石野博

警察に車を強奪されたタクシードライバーのタレックは、シリア内戦で国内が無法地帯と化している惨状に絶望し、国を脱出して北アフリカ某国に逃げた。(第1回から読む)

北アフリカの国に到着後、タレックは、自分が専門とするエンジニアリングの仕事を始めようとしたが、親しくなった男に金を盗まれてしまった。経済的に困窮した彼は、生活費を稼ぐためにタクシーの運転手を始めたのである。タレックは、北アフリカでタクシー運転手をしながら、他の家族がすでに定住している別の国で難民申請することに決めた。

タレックは、ケビンにビザ申請の書類作成を手伝ってくれるよう頼んだ。書類を見ながら、タレックはケビンに尋ねた。「『探す』ってこれはどういう意味なんだい?」「『探す』とは、何かを求めて探すことを意味するんだよ」。ケビンは続けた。「イエスは、求めることと見いだすことについて話されたよね」。だが、タレックはすぐに話題を変えてしまった。

ところが数日後、タレックはケビンに言った。「イエスが 『探す』について言っていることをもう一度教えてくれないかな? 君がなぜそんなにイエスについて熱心に話すのか理解したいと思ってね」

これを聞いてケビンと妻は驚いて言った。「イエスは、私たちがイエスを求めるとき、必ずイエスを見つけることができると約束されたんだ」。これがきっかけとなって数週間、タレックとケビンは、イエスについて、イスラム教について、聖書について対話を続けた。

ある日、ケビンが言った。「タレック、一緒に聖書を学ばないかい?」「君のために一冊買ってこようか?」するとタレックの表情が明るくなった。「本当に? もちろんお願いしたいよ! ケビン、君は僕の心の友で兄弟だ!」

聖書を受け取ったタレックは喜びを爆発させた。「僕がシリアを離れてここに来たのは、神のご計画だったのに違いない! それにケビン、君がここにいたのも神のご計画だよ! そして今、僕はこの本を持っている。ああ、そこに何が書いてあるのか知りたい、知りたいよ!」(続く)

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■ シリアの宗教人口 ※内戦前統計
イスラム 90%
プロテスタント 0・2%
カトリック 3・1%
正教系 3・0%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。