2024年8月4日15時46分

ワールドミッションレポート(8月4日):シリア イスラム教徒のタクシードライバー、キリスト教徒を乗せて人生の新たな道を案内される(1)

執筆者 : 石野博

シリア難民のあるイスラム教徒は、戦災を避けて北アフリカの某国へ逃れた。タクシー運転手として生計を立てていた彼はある時、子どもたちを連れた2人のキリスト信者の労働者を乗せたのだ。

運転手のタレックは、自分は内戦のシリアから避難して来たのだと告げると、キリストを信じるケビンはこう言った。「何だって? 僕たちは今朝、君の国のために祈ったばかりだよ」。この些細な会話がきっかけとなって、それ以降、何週間、何カ月も続く霊的な対話が始まるなどとは、この時の彼らは知る由もなかった。

目的地に着いて、ケビンと妻と子どもたちはタクシーを降り、運転手のタレックと別れを告げた。しかしその後、ケビンと妻はどういうわけかこのタレックのことが気になり、タクシーに乗ってタレックを探した。面白いことに彼らは、別のタクシーを手配して、別のタクシー運転手を探したというわけだ。

ほどなくして、彼らはタレックを探し当てた。そして分かったのは、どうやらタレックはシリアでエンジニアをしていたということだった。シリア内戦のどさくさで、シリアの街々は無法地帯と化した。もともとエンジニアだったタレックは内戦によって職を奪われ、腰掛けとしてタクシードライバーを始めた。しかし警察はタレックの車を奪い、街の外に連れ出し、下着まで脱がせ、そして車を盗んだのだ。

無一文の裸に近い状況で放り出されたタレックは、電話のある場所まで何時間も歩かなければならなかった。電話のある場所まで来ると、タレックはようやく電話を借りて助けを求めることができたのだ。

自宅に戻るとタレックは、GPS追跡装置を使って自分の車のある場所を特定した。しかし警察はタレックがGPSで追跡していることを知ると、今度はタレックの息子を脅したのだ。シリアがあまりにも絶望的な状況にあることに打ちのめされたタレックはその翌日、家族と共にシリアを脱出したのである。(続く)

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■ シリアの宗教人口 ※内戦前統計
イスラム 90%
プロテスタント 0・2%
カトリック 3・1%
正教系 3・0%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。