2024年5月8日09時41分

ワールドミッションレポート(5月8日):中国 足のなえた者も獲物をかすめる(5)

執筆者 : 石野博

困難な伝道が続く中、1870年、ストットは宣教報告のため、一時的に本国に戻った。それまで独身者として仕えていたストットは、スコットランドのグラスゴーでグレース・シギーと結婚した。新婚夫婦の彼らは、時を移さず温州に戻った。新婚花嫁を伴う宣教地への帰還は、面白い展開になった。(前回はこちら)

当時の中国では、西洋人の女性はとても珍しい存在だった。ジョージが妻と一緒に訪れると、行く先々で、今まで一人で行ったときとは全く違う、素晴らしい反応に恵まれることに気付いた。1875年、彼は次のように書いている。

「私は愛する妻と一緒に訪問と説教の旅に出かけました。すると人々は、私のことは見慣れているのですが、妻のグレースを一目見るためにいろいろな所からやって来て、大変な興味を示したのです。場所によっては何百人もの人々が私の話に耳を傾け、妻は多くの女性たちに語りかけました。その中には熱心に耳を傾ける人もいて、生ける真の神に仕えるにはどうしたらよいのですかと真摯(しんし)な質問を受けることも決して少なくなかったのです」

ストット夫妻が、教会員が所有する田舎の家に滞在したとき、毎朝毎晩11人の家族が一緒に祈りをささげていた。すると村人たちが次々に偶像を捨て、キリストのみを信仰するようになったのだ。ストット夫妻が村人に別れを告げ、温州の自分の家に帰る日、年配の女性が彼らの手を握ってこう話した。

「ああ、救いの言葉を伝えるために、ストット夫妻を遣わしてくださったイエス様! なんとありがたいことでしょう! あなたたちがこの尊い御名を教えてくれるまでは、私はそれを全く知りませんでした。今ではあなた方の話を聞くのが私の楽しみです。でも残念ながら、私の目は悪く、今はかすんであなた方の姿が影のように見えるだけです・・・」

「最初にあなたたちがここを訪れた数年前、私は今よりも見えましたが、あなたたちの教えにもイエス様のことにも、全く興味がありませんでした。全く知ろうともせず、あなた方を見ようともしませんでした。ああ、それなのに何ということでしょう。今ではその教えを愛し、その教えをもたらしてくれたあなた方を愛しているのです! 見えたときには、私は見ようともしませんでした。しかし今はいくら見たくても、あなたたちのお顔をはっきり見ることができません。でも喜びがあります。今は心の目が開いて、今まで見えなかったものがはっきり見えるのですから。どうかせめて、あなたたちの手を握らせてください」(次回に続く)

■ 中国の宗教人口
プロテスタント 6・4%
カトリック 1・6%
無宗教 44・4%
儒教 28・5%
仏教 12・5%
イスラム 1・9%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。