2023年11月7日09時26分

ワールドミッションレポート(11月7日):イスラエル ガザのキリスト教徒

執筆者 : 石野博

ガザには約900人のキリスト教徒が居住しているが、ハマスとイスラエルの紛争に関する報道では見過ごされがちだ。

ガザのキリスト教徒たちは通常、単にパレスチナ人と呼ばれ、しばしばハマスと結びつけられてしまう。しかし、ほとんどのパレスチナ人は、現在進行中の紛争に巻き込まれ、それに耐えるしかない一般市民である。

現在ガザ地区には、ギリシャ正教、ローマ・カトリック、バプテストの3つのキリスト教会がある。正教会の建物は甚大な被害を受け、ガザ・バプテスト教会も、近くを襲ったイスラエル軍の弾薬によって多少の被害を受けた。

ガザ市のリマル地区では、多くのキリスト教徒が家を失い、他に行くところがないため、避難生活を余儀なくされている。

現在、聖公会が管理している唯一のキリスト教病院であるバプテスト病院も打撃を受けた。ガザのキリスト教ミッションのハンナ・マサド牧師は「このような悲劇を目の当たりにしたのは初めてです」と語った。彼はまだこの出来事の重大さをかみしめている。

多くの人々が、キリスト教を信仰する病院が安全な避難所であると信じ、病院に避難を求めた。テロリストのロケット弾の誤射による病院の爆発は、そこに避難した多くのパレスチナ人の命を奪ったのだ。近東教会協議会の建物も空爆で甚大な被害を受けた。

パレスチナのキリスト教徒は祈りを呼びかけ、暴力や復讐よりも愛と赦(ゆる)しの重要性を強調している。彼らは安全な人道援助アクセスを求めている。ガザのキリスト教ミッションは、同地区は、深刻な貧困地域であると報告している。

ガザの人口の半分近くは14歳以下の子どもで、65歳以上の平均寿命はわずか3%だ。ガザの帯水層は、海水、下水、化学物質で汚染されているため、飲料水として安全な水は10%にも満たない。紛争前でも、電気は1日4時間程度しか使えなかった。10人に3人が1日1・90ドルの貧困ライン以下で暮らし、80%の人が慈善団体に食料を頼らざるを得ない。

平時においてさえ、貧困や脆弱(ぜいじゃく)なインフラがガザの人々の生活を苦しめているところに、紛争がさらに追い打ちをかけている。ましてテロ組織ハマスは、あえて民間人を盾にするような方策をとっているため、一般のガザ市民が悲劇に巻き込まれている。

速やかな紛争解決のために祈ろう。とりわけ子どもや女性、老人や病人など弱い立場の者が守られるように、そして現場に置かれているキリスト者の兄弟姉妹が、福音にある希望を人々に指し示すことができるよう祈っていただきたい。

■ イスラエルの宗教人口
ユダヤ教 75・4%
イスラム 16・7%
プロテスタント 0・4%
カトリック 1・0%
英国教会 0・02%
正教会 0・6%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。