2023年10月26日21時04分

ワールドミッションレポート(10月26日):ウクライナ アバ父と呼ぶ御霊、孤児から息子に

執筆者 : 石野博

「子どもの頃から、人生で誰からも必要とされていないと信じ込むと、その後の人生に深い傷跡が残ります」とスヴェトラーナは言った。これは、彼女と彼女の夫が養子に迎えた10代の少年セルゲイについての言葉である。

スヴェトラーナのような養子縁組に関わる敬虔な夫婦やミニストリーのおかげで、セルゲイのような少年は、家庭の温もりを経験し、キリストについて初めて聞き、学ぶことができるのだ。

地元の信者が指導するバイブルスタディーの中で、スヴェトラーナは、ヤコブ書1章27節にある「父なる神の御前できよく汚れのない宗教は、孤児や、やもめたちが困っているときに世話をし、この世から自分をきよく守ることです」の真理に気付きが与えられた。スヴェトラーナと夫は、自分たちに5人の子どもがいるにもかかわらず、セルゲイのような孤児の必要に無関心ではいられなかったのだ。2人は何度も祈った後、セルゲイを養子として迎える決意をした。

当初のセルゲイは石のようなかたくなな心を持っていた。彼は、大人たちの損得のために自分が養子に出されたのだと固く信じて疑わなかった。そんな少年が生まれて初めてイエスのことを聞いたのだ。

少年は新しい家族と一緒に祈り、聖書を学んだ。2回参加した夏のユースキャンプは、彼にとって大きな喜びだった。それでもセルゲイは、自分なんて神に気にかけてもらうにはあまりにも取るに足らない存在だと信じていた。そして彼は、その思いが拭えなかったのだ。

大人になったセルゲイは兵士となり、国のために戦った。するとあるとき、一人の牧師が彼の所属する部隊にやって来て福音を伝えてくれた。この時セルゲイは、養父母と暮らしていたときに学んだことを思い出した。

その後セルゲイは戦闘で重傷を負ってしまったが、これがきっかけとなってついに御言葉の真理を受け入れ、イエスに従う者になったのだ。かつて孤児として敬虔な家庭に受け入れられた少年セルゲイは、今では負傷した他の兵士たちと福音を学び、分かち合っている。

私たち一人一人も、かつては罪のもとに売られ、帰る場所も分からぬ霊的孤児のような者であった。しかし憐(あわ)れみ深い父なる神は、このような罪の泥にまみれたわれらを抱き上げ、キリストの尊い血によって洗ってくださり、ご自分の子どもとしてくださったのだ。そして今やわれらは、この神を大胆に「アバ、お父さん」と親しく呼びかける身分を得た(ロマ8:15)。

故にキリスト者は、不遇の孤児を他人事とは決して思えない。多くのキリスト者が、孤児を積極的に養子として迎えるのは、こういう理由があるからだ。

愛情を注がれて変えられていく孤児たちの姿を見ると、大きな感動と喜びがあふれる。特にウクライナでは昨年来、戦災孤児となる子どもも多かろう。このような子どもたちがキリスト者のカップルに引き取られ、セルゲイがそうであったように、豊かな愛情を受けて変えられ、福音を分かち合う者とされるように祈っていただきたい。

■ ウクライナの宗教人口
正教 61・2%
プロテスタント 5・8%
カトリック 10・1%
無神論 19・5%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。