2021年6月9日11時50分

キリストのために苦しむ 安食弘幸

コラムニスト : 安食弘幸

キリストのために苦しむ 安食弘幸

「あなたがたがキリストのために受けた恵みは、キリストを信じることだけでなく、キリストのために苦しむことでもあるのです」(ピリピ1:29)

ある男性が、歳のせいか最近夜中に起きてトイレに行くようになりました。ある朝、起きると妻に言いました。

「夜中に起きてトイレに行ったんだけど、トイレのドアを開けたらパッと電気が点いたんだ。そして用を足してドアを閉めると、勝手に電気が消えたんだ。家のトイレっていつから自動点灯式に変わったんだい?」

それを聞いて妻は憐(あわ)れむように言いました。「あなた、また冷蔵庫を開けてオシッコしたのね」

もう一つ、トイレネタを紹介します。

2人の初老の男がトイレでばったりと出会いました。

「いやー久しぶり、元気でしたか?」「元気とは言えませんね、最近ボケてしまったのか、こうして用を足した後、ズボンの前のジッパーを上げるのを忘れていて注意されることがありますよ」

「あなた、それならまだ良い方ですよ。私なんかズボンのジッパーを下ろすのを忘れてオシッコをしてしまうことがあるんですから」

「ぼける」を辞書で引くと「頭の働きや感覚が鈍くなる。ぼんやりする。もうろくする」とあります。「幸福ボケ」とか「平和ボケ」という言葉もあります。「幸せ」や「平和」という状況に長くいると、それが普通だと思ってその状況に感謝したり、感動したりすることがなくなってしまっている状態です。

クリスチャンがしばしば陥る罠(わな)は「恵みボケ」です。イエス・キリストの福音を信じ、救いにあずかることによって罪の赦(ゆる)し、死に対する恐れからの解放、天国の希望、心配や思い煩いからの解放など多くの恵みにあずかります。そして、その状況に安住してしまい、その安住に挑戦するものの一切を拒否しようとします。しかし、イエス・キリストと共にある人生は、戦いの歩みだということも忘れてはなりません。

パウル・ゲルハルトは、ドイツ史上最高の宗教詩人といわれます。69年の生涯で132の賛美歌を作っています。彼の人生は苦難の連続でした。彼は1607年にヴィッテンベルグ近くの小さな町に生まれました。その翌年「30年戦争」が勃発し、ドイツは戦場となり荒廃します。

彼は大学で神学と聖歌学を学びましたが、戦乱の中で定職がなく、家庭教師をしながら生計を立てます。恋人もできましたが、貧困のために結婚もできずにやがて別れます。

35歳の時、牧師の職に就き、やっと結婚をし4人の子どもに恵まれますが、3人の子どもを病気で次々と失い、結婚13年目に最愛の妻にも先立たれます。彼の生涯は悲劇の連続でしたが、逆境の中にあっても作詞をやめませんでした。「彼の詩は喜びの中で生まれたものではなく、大概の人なら失望して泣き叫ぶような中から生まれたものである」といわれます。

彼が最後に牧師をしたリュッペン村には、彼の銅像が建てられて、その銘に「サタンのふるいによってふるわれた神学者」と記されています。彼の代表作「あなたの道を」(讃美歌21、528番)、この詞は彼の不屈の信仰をよく表したものだといわれます。

1あなたの道を 主に任せて 思いわずらい 主にゆだねよ
雲と風にも 道を示す 神は歩みを 導かれる

2どんな時にも 道を備え あなたのわざを 神は祝す
いつもあなたの 先に進み 光を照らし 導かれる

3悪が支配し おどす時も 先立つ神は 戦われる
目標めざす あなたのために なすべき務め 与えられる

4走るべき道を 走り終えて 栄光のみ国へ 帰るその日
勝利の冠 与えられて 喜びの歌 共に歌おう

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安食弘幸

安食弘幸

(あんじき・ひろゆき)

峰町キリスト教会牧師。1951年、島根県出雲市に生まれる。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球、関西六大学リーグのスラッガーとして活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒(哲学博士)。JTJ宣教神学校講師、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設などで講演活動を行っている。著書に『キリストを宣べ伝える―コリント人への手紙第二』『心の井戸を深く掘れ』『道徳力―モーセの十戒に学ぶ―』『ルツの選択、エステルの決断』など多数。

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