2021年1月21日23時17分

米国の大統領交代、トランプ氏の功績とは?

執筆者 : 込堂一博

ドナルド・トランプ
ドナルド・トランプ米大統領(写真:Gage Skidmore)

5年前の米大統領選で、型破りのドナルド・トランプ氏が選ばれたとき、本当に驚いた。人をにらめつけるような目つき、風変わりな髪形、大言壮語に聞こえる「米国第一主義」の政治姿勢、そして国際協調を軽視するスタイル。個人的には、まったく好きになれないタイプだ。しかし、米国の福音派クリスチャンの多くがトランプ氏を支持していると聞いていたので、その言動に注目してきた。

その4年の任期中、エルサレムをイスラエルの首都として認定し、米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転し世界が衝撃を受けた。おそらくこのような決断は、トランプ氏でなければ絶対無理であったろうと思う。イスラエルとアラブ諸国との国交樹立で中東に安定をもたらした意義も大きい。

さらにその攻撃的な風貌とは反対に、任期中新たな戦争を起こさなかったことも大きなことだ。特にこの間、北朝鮮のミサイルが日本上空を何回も飛び、大きな緊張を強いられた。いつ北朝鮮と米国が武力衝突するかという危惧があった。そのような中、トランプ氏は史上初となる米朝首脳会談を2度も行い、金正恩(キム・ジョンウン)と直接交渉し、韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店(パンムンジョン)でも面会を行った。拉致被害者救出にも非常に前向きだった。首脳会談は成功したとはいえないが、これであの日本列島を通過するミサイル実験が止まったことは確かだ。半面、わが国のリーダーからは金正恩と直接交渉しようという熱意がまったく伝わってこないのが残念だ。

今回の大統領選に対して、外国からの干渉や不正があったとして法的手段で司法に訴えたが、ことごとく却下され実を結ばず4年で大統領の座を去った。しかし米国人の半数近くがトランプ氏を支持し、大統領選の不正疑惑も完全には解消されておらず、ジョー・バイデン新大統領の前途は極めて難しいことが予想されている。さらなる米国内の混乱も危惧される。

新型コロナウイルスのパンデミックと共に米国をはじめとする国際政治はさらに混沌とし、激動するに違いない。今回の米国の大統領交代は、国籍を問わずキリスト者として生きることが容易ではない試練の時代の幕開けのように受け止めている。

「これらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を得るためです。世にあっては苦難があります。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝ちました」(ヨハネ16:33)

※ この文章は、込堂一博牧師がフェイスブックに投稿した文章を、許可を得て編集・転載したものです。

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込堂一博

込堂一博

(こみどう・かずひろ)

北海道室蘭市生まれ。聖書神学舎卒業。屯田キリスト教会協力牧師、三浦綾子読書会相談役。著書に『三浦綾子100の遺言』『人生の先にある確かな希望(天のふるさと)』『三浦文学の魅力と底力』『終わりの時代の真の希望とは』他。