2020年9月11日11時11分

新・景教のたどった道(38)大秦流行中国碑のシリア語と解読(7)川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

景教碑には多くのシリア文字が刻まれています。前面と左右の側面にエストランゲロス書体のシリア文字です。それらを解読し日本語にしました。

古代の東方教会(東方正教会とは違う)は、ユダヤから東方方面のアラム語やシリア語を使うイエス信徒共同体のシリアやイラクから、シルクロードとシールートで東に向けて宣教していった宣教教団です。彼らの言語はアラム語、シリア語で、中央アジアに入るとソグド語に影響を与えました。

シリア語の最も古いものはエストランゲロス書体(碑はこの書体で彫られている)で、それから変化してヤコブ式書体、ネストリウス式書体があります。シリア語旧約聖書ぺシッタ訳はヘブル語から、恐らく2世紀ごろから翻訳されました。それ故、ローマ・カトリック教会のような外典や煉獄思想もありません。書き方も読みもヘブル語やアラム語と同じ右から左へと書き読みします。

碑の両側面には漢字とシリア文字が刻まれていて、向かって左側面を訳しました。漢字で「僧」とあるのは長老のことで、当時の指導者には宗教団体を問わず僧と名づけられていました。大主教・主教は監督のことかと考えます。

側面には70人の指導者名が刻まれていますが、この碑を建てるために賛同し、費用を拠出した者ではないかと考えます。左側面には41人の指導者の名が刻まれていて、第3段目13人を紹介しました。

新・景教のたどった道(38)大秦流行中国碑のシリア語と解読(7)川口一彦

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※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
Jessie Payne Smith, A Compendious Syriac Dictionary (1999)
呉昶興著『漢語基督教経典文庫集成』

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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電話:090・3955・7955 メール:[email protected]

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