2020年8月23日19時58分

新・景教のたどった道(37)大秦流行中国碑のシリア語と解読(6)川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

景教碑には多くのシリア文字が刻まれています。前面と左右の側面にエストランゲロス書体のシリア文字です。それらを解読し日本語にしました。古代の東方教会(東方正教会とは違う)は、ユダヤから東方方面のアラム語やシリア語を使うイエス信徒共同体のシリアやイラクから、シルクロードとシールートで東に向けて宣教していった宣教教団です。

彼らの言語はアラム語、シリア語で、中央アジアに入るとソグド語に影響を与えました。シリア語の最も古いものはエストランゲロス書体(碑はこの書体で彫られている)で、それから変化してヤコブ式書体、ネストリウス式書体があります。シリア語旧約聖書ぺシッタ訳はヘブル語から、恐らく2世紀ごろから翻訳されました。それ故、ローマ・カトリック教会のような外典や煉獄思想もありません。書き方も読みもヘブル語やアラム語と同じ右から左へと書き読みします。

碑の両側面には漢字とシリア文字が刻まれていて、向かって左側面を訳しました。漢字で「僧」とあるのは長老のことで、当時の指導者には宗教団体を問わず僧と名付けられていました。大主教・主教は監督のことかと考えます。側面には70人の指導者名が刻まれていますが、この碑を建てるために賛同し、費用を拠出した者ではないかと考えます。左側面には41人の指導者名が刻まれていて、第2段目6人を紹介しました。

新・景教のたどった道(37)大秦流行中国碑のシリア語と解読(6)川口一彦

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※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
Jessie Payne Smith, A Compendious Syriac Dictionary (1999)
呉昶興著『漢語基督教経典文庫集成』

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

愛知福音キリスト教会(日曜と火曜集会)ならびに名古屋北福音キリスト教会(水曜集会)の宣教牧師。フェイスブックで「景教の研究・川口」を開設。「漢字と聖書と福音」「仏教とキリスト教の違い」などを主題に出張講演も行う。書家でもあり、聖書の言葉を筆文字で書いての宣教に使命がある。大学や県立病院、各地の書道教室で書を教えている。基督教教育学博士。東海聖句書道会会員、書道団体以文会監事。古代シリア語研究者で日本景教研究会代表。特に、唐代中国に伝わった東方景教を紹介している。著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』など。