2020年8月5日10時48分

死んだ者を生かす神 安食弘幸

コラムニスト : 安食弘幸

彼(アブラハム)は、死者を生かし、無いものを有る者として召される神を信じ(た)(ローマ4:17)

ある男が山道を歩いているとき、足を滑らせて崖下へ転落しそうになりました。落ちる途中、必死に手を伸ばして一本の木の枝につかまりました。しかし、その木も彼の体の重みで今にも抜けてしまいそうです。

下を見ると地面ははるかに下の方。しかも岩場。落ちたらまず助かりません。そこで彼は必死にお祈りしました。「神さま―!お助けくださーーーーい!」

すると天から声がしました。「お前を助けてやろう。その手を離しなさい。そうすれば御使いを送って助けてやろう」

しかしこの男、少しためらった後に再び大声で叫び始めました。「神さま以外の誰かーー!ボクを助けてくださーーーーい!」

人生におけるある問題は、神に助けを求める以外に方法はないのに、多くの人は神以外の所に必死に助けを求めているのです。

旧約聖書にアブラハムという人物が登場します。約4千年前、メソポタミヤ地方のカルデヤのウルに住んでいました。彼は「あなたの土地を離れて、わたしが示す地へ行きなさい」という神の声に従って故郷を後にしました。

アブラハム75歳、妻サラ65歳の時で、2人には子どもはありませんでした。彼が99歳になったとき、神は言われました。「来年の今ごろ、あなたの妻サラは男の子を産む」。そして神のことば通り、翌年男の子が生まれます。「イサク」です。

聖書はこの時のアブラハムの信仰を次のように言っています。「彼はおよそ100歳になり、自分のからだがすでに死んだも同然であること、また、サラの胎が死んでいることを認めても、その信仰は弱まりませんでした」。つまり、アブラハムは自分の「からだ」と妻サラの「胎」が子どもを宿して産むという点から言うと、もう「死んでいる」枯れ木のようなものであるけれど、神がこの体を生かして子どもを産ませてくださると信じたのです。

彼は、死んだ者を生かす神に信頼したのです。

シンガーソングライターのジェイソン・クリグラー(Jason Crigler)は2004年34歳の時、ライブで演奏中に脳内出血で倒れました。半年たっても、ジェイソンは意識不明の状態で、医師は命は助かっても、意識が戻る可能性はほとんどなく、植物人間になるかもしれないと告げました。

それでもクリスチャンの妻モニカは夫の快復を信じました。「神様は、夫をもう一度舞台に立たせてくださる」。そして、家族の協力を得て看病に当たります。しかし、彼は発病以来、目の焦点は合わず、口は開いたままで食事もできない状態でした。

しかし7カ月たったある日、妻の呼び掛けに反応するようになりました。それから徐々に回復し、ゆっくりですが支えられながら歩くことができるようになりました。それでも医師は「これ以上の回復は望めません。まして音楽活動に戻ることは不可能です」と告げました。

その後家族は彼を自宅に連れ戻り、自宅で介護を始めます。懸命なリハビリや友人たちの経済的サポートもあって、1年後にジェイソンは補助なしで歩けるようになり、特注のギブスを使ってギターが弾けるまでに回復したのです。

そして2006年ニューヨークのライブハウスで、彼は復活ライブを行ったのです。現在、彼はライブ活動やCMやドラマの作曲をするとともに、脳障害で苦しむ患者と家族を励ます講演活動を行っています。

彼が復活ライブのために作った新曲の歌詞の一部を紹介します。

ボクは健康な体を失ったが、もっと多くのものを得た。
それは神を信じることから来る希望である。
ただ習慣的に教会に行くなんてもったいない。
そこには生ける神、奇跡の神がおられるのに。

あなたの人生に「死んだような部分」はありませんか。死んだ者を生かす神に助けを求めてみてください。

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安食弘幸

安食弘幸

(あんじき・ひろゆき)

峰町キリスト教会牧師。1951年、島根県出雲市に生まれる。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球、関西六大学リーグのスラッガーとして活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒(哲学博士)。JTJ宣教神学校講師、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設などで講演活動を行っている。著書に『キリストを宣べ伝える―コリント人への手紙第二』『心の井戸を深く掘れ』『道徳力―モーセの十戒に学ぶ―』『ルツの選択、エステルの決断』など多数。

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