2020年7月8日15時49分

試練を喜びとする人生 安食弘幸

コラムニスト : 安食弘幸

私の兄弟たち。さまざまな試練にあうときはいつでも、この上もない喜びと思いなさい。あなたがたが知っているとおり、信仰が試されると忍耐が生まれます。(ヤコブ1:2〜3)

ある大きな池にたくさんのカエルが住んでいました。季節になると渡り鳥が飛んできて、翼を休め、再び飛んでいくのです。空高く舞う鳥たちを見て、一匹のカエルがうらやましく思っていました。「あ〜あ。ボクも一度でいいから、あんなふうに空を飛んでみたいな〜」

仲間のカエルにそのことを話してもバカにされるだけです。「オレたちカエルだよ。空なんか飛べるはずがないじゃない。そんなバカなこと考えてないで、早くカエルよ」

しかしこのカエルはどうしても諦められません。不思議なことですが、諦めないで必死に考えていると道は開けるものです。このカエル、素晴らしいアイデアを考え出したのです。

池に飛んで来る鳥たちにお願いしました。「ボクがこの棒をしっかりくわえていますから、鳥さんたちでこの棒の両端をくわえて飛んでもらえますか」

しばらくすると、池カエルたちは空高く舞い上がる一匹のカエルを仰ぎ見ることになるのです。そしてカエルたちは口々に言います。「すごい すごい、しかし誰があんなことを考え出したんだろう。きっとものすごい頭のいいやつに違いない。誰だ 誰だ」

それを聞いていた空を飛んでいたカエル、思わず叫んでしまった。「それはボクだよ〜」。数秒後には地面の上にぺちゃんこのカエルが一匹死んでいました。

聖書のことばです。

「高慢は破滅に先立つ」。人間は順風満帆でやる事成す事が皆成功したら本人も気付かないうちに高慢の芽が出てきます。しかしそれは危険の崖の上に立っているときです。一歩踏み出すと墜落です。

私たちの人生にしばしば試練が与えられるのは、私たちの弱さ、足りなさを教えて私たちを謙虚にさせ、高慢の滅びから守ろうとする神の知恵です。

日野原重明先生(元聖路加国際病院・名誉院長)は京都大学医学部に見事に合格し、「よし、これでボクは医者になるという将来は決まった。そうなったらさらに上を目指そう。京大の医学部の教授になってやるぞ」と意気込んでいた矢先、大学1年の終わりに結核を患い、8カ月間は絶対安静となり1年後に復帰しますが、留年したことからエリートコースは諦めざるを得なくなったのです。

当時は病気のことは「不運」としか思えなかったそうですが、医者になってから「あの1年は失ったのではなく神の恩寵だった」と思えるようになったのです。

医学のことは先生に教われるし、教科書にも書いてあります。しかし、病気になった人の心の内は体験しないと分からないのです。留年して大損したと思っていたことが、医者にとってこれほど得なことはなかったと、後になって気付いたといいます。

日野原先生は「二度としたくないというつらい体験が役に立つから人生は面白い」と言います。

人生は自分の計画通りに行かないことも多々あります。しかし、神に信頼する者に失望はありません。神はさらに素晴らしい計画を持っておられ、すべてのことを益と変えてくださるからです。

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安食弘幸

安食弘幸

(あんじき・ひろゆき)

峰町キリスト教会牧師。1951年、島根県出雲市に生まれる。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球、関西六大学リーグのスラッガーとして活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒(哲学博士)。JTJ宣教神学校講師、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設などで講演活動を行っている。著書に『キリストを宣べ伝える―コリント人への手紙第二』『心の井戸を深く掘れ』『道徳力―モーセの十戒に学ぶ―』『ルツの選択、エステルの決断』など多数。

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