2020年6月14日20時03分

新・景教のたどった道(33)大秦流行中国碑のシリア語と解読(2)川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

景教碑には多くのシリア文字が刻まれています。前面と左右の側面にエストランゲロス書体のシリア文字です。それらを解読し日本語にしました。

古代の東方教会(東方正教会とは違う)は、イスラエルから東方方面のアラム語やシリア語を使うイエス信徒共同体のシリアやイラクから、シルクロードとシールートで東に向けて宣教していった宣教教団。その時の言語がアラム語であり、それから変化したシリア語を用いていました。中央アジアに入るとソグド語に影響を与えました。

シリア語の最も古いものはエストランゲロス書体(碑はこの書体で彫られている)で、それから変化してヤコブ式書体、ネストリウス式書体があります。旧約シリア語聖書ぺシッタ訳はヘブル語から、恐らく2世紀ごろから翻訳されました。書き方も読みもヘブル語やアラム語と同じ右から左へと書き読みします。今回は景教碑下部のシリア語を取り上げ、和訳しました。

「ギリシア紀元の1092(キリスト紀元の781)年に、アフガニスタン北部の町バルフ(バルク)で亡くなった長老ミリスの子、長老で中国長安の地方主教マル・イズドボジードが救い主の教えと中国皇帝に伝えた説教をこの石に刻み、記念として建碑した」

注:イズドボジードとは碑に「寧恕」と漢文で彫られてあり、碑の建設に関わった人物のこと。

新・景教のたどった道(33)大秦流行中国碑のシリア語と解読(2)川口一彦
新・景教のたどった道(33)大秦流行中国碑のシリア語と解読(2)川口一彦

<<前回へ     次回へ>>

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
Jessie Payne Smith, A Compendious Syriac Dictionary (1999)
呉昶興著『漢語基督教経典文庫集成』

◇

川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

【川口一彦・連絡先】
電話:090・3955・7955 メール:[email protected]

フェイスブック「川口一彦」で聖句絵を投稿中。また、フェイスブック「景教の研究・川口」でも情報を発信している。

■ 【川口一彦著書】(Amazon)
■ 【川口一彦著書】(イーグレープ)

■ HP:景教(東周りのキリスト教)
■ フェイスブック「川口一彦」
■ フェイスブック「景教の研究・川口」