2018年12月2日19時19分

ブーゲンビリアに魅せられて(最終回)厳しさの先に喜びが―感謝あふれる卒業式 福江等

コラムニスト : 福江等

ブーゲンビリアに魅せられて(最終回)厳しさの先に喜びが―感謝あふれる卒業式 福江等
厳しい教育を全うし、感激にあふれる卒業式の記念写真=2006年3月

卒業式は、どこの学校でもそうだと思いますが、マニラの神学校でも気持ちが高揚する特別な時です。卒業生たちは、ここまで来るのに3年から5年の長きにわたって、厳しい勉学に耐えてきています。

この神学校は、前にも記しました通り米国の大学院式の教育制度にのっとっていますから、単位の取得は厳密で、妥協を一切許しません。温情主義の入るすきはまったくなく、1単位でも足りなければ卒業できないことになります。

学生たちは、毎日の課題をこなすために徹夜をしたり、睡眠を削ったりし、その上にアルバイトをしている学生も多く、家族持ちの学生は子どもたちの教育もしていかねばなりません。週末になると教会での奉仕が待っています。日曜日は一日中教会で仕事をしています。

このような生活ですから、すべての単位を取得し、卒業論文の厳しい審査に合格し、いよいよ卒業式の日を迎えると、感極まって涙する人も少なくありません。家族や友人が、そして神様が、よくぞここまで守り支えてくださったと、心底から感謝の思いがこみ上げてくるようです。

このような厳しい神学校の教育を全うして、卒業生たちはそれぞれの働きの現場へと出発していきます。そこにも新しい戦いが待っています。しかし、神学校であの厳しい学びを全うしたということが、彼らに一つの代えがたい励みを与えているようです。信頼して一歩ずつ積み重ねていけば、どんなに困難だと見えることも、いつか必ずできるのだという確信をもたらしています。

ですから私たちは卒業式で、できるだけの祝福を彼らに与えて送り出します。卒業式の前夜には卒業晩餐会を盛大に行います。こぎれいなホールを貸りて精いっぱいのごちそうをします。

卒業式の当日は、南国情緒あふれる美しいキャンパスの中央を一人ずつ行進してチャペルに入場し、学位の授与式や聖歌隊の賛美、ゲストスピーカーの講演などのプログラムに臨みます。卒業式の最後には教師たち、理事たちがチャペルの外に並んで、中から出てくる卒業生たち一人一人と固く熱い握手を交わしていきます。抱き合うこともしばしばです。

その後、中庭の芝生の上で、卒業生たちの家族も交えてにぎやかな大晩餐会が開かれ、ともどもに喜びを分かち合います。それが終わると私たち教師は、くたくたの疲れも忘れ、彼らを無事世に送り出したという充実感に満たされます。そして一段と輝くブーゲンビリアの咲きほこるキャンパスを眺め、心から安堵するのです。

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福江等

福江等

(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001~07年、フィリピンのアジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

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