2018年5月10日18時58分

温故知神―福音は東方世界へ(97)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本42 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

温故知神―福音は東方世界へ(97)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本42 川口一彦

<本文と拓本>文字32(1272+32=1304)

自王舎之城[注](遠く王舎城より)、聿来中夏(ついに中夏に来る)、術高三代(術は三代に高く)、蓺愽十全(芸は十全に博し)。始効節於丹庭(始めて使節を丹庭に効し)、乃策名於王帳(乃ち名を王帳に策す)。中書令[注]

<現代訳>

遠くバルクの地より中国に来ました。武術は三代に高く、芸能においても優れていました。初めて宮庭に招かれるや王帳にその名が記されるほどでありました。中書令

[注]王舎城とは、中インドのマカダ国との説。別にアフガニスタンのバルクとの説あり。おそらく景教徒たちの中国宣教の拠点としてシルクロードの多くある道のバルクをその地にしたのだろうと考える。景教碑の撰文下に彫られたシリア語文から見るなら、トカリスタンとあり、アフガニスタン北部に位置する所と考える。

[注]中書令とは、皇帝が出す詔勅の起草を担当する官職名で、国政に参与する権限もあった。

温故知神―福音は東方世界へ(97)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本42 川口一彦

<解説>

中央アジアのバルクより中国の都長安に来た景教徒の伊斯は、信仰者として立派に生き、与えられた賜物の武術や芸能が生かされ、唐の皇室に招かれるや高く評価される人物でもありました。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

愛知福音キリスト教会(日曜と火曜集会)ならびに名古屋北福音キリスト教会(水曜集会)の宣教牧師。フェイスブックで「景教の研究・川口」を開設。「漢字と聖書と福音」「仏教とキリスト教の違い」などを主題に出張講演も行う。書家でもあり、聖書の言葉を筆文字で書いての宣教に使命がある。大学や県立病院、各地の書道教室で書を教えている。基督教教育学博士。東海聖句書道会会員、書道団体以文会監事。古代シリア語研究者で日本景教研究会代表。特に、唐代中国に伝わった東方景教を紹介している。著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』など。