2018年3月12日19時48分

牧師の小窓(123)H兄からの手紙 福江等

コラムニスト : 福江等

牧師の小窓(123)H兄からの手紙 福江等
H兄から届いたお手紙の封筒

今回のコラムでは、私どもの教会の1人のクリスチャンについてご紹介したいと願っています。お名前はH兄としておきます。この方は92歳とご高齢になり、動脈瘤という危険なものを心臓の近くに抱えながらも、お元気に過ごしていらっしゃいました。

けれども昨年の2月に突然左目がまったく見えなくなり、右目は以前からほとんど見えなかったために実質上盲目のような状態になられたのでありました。そのため入院を余儀なくされ、息子さんご夫妻の近くの病院で現在も過ごすこととなりました。以前からほとんど見えていなかった右目にわずかの視力が残っていて、そのわずかの視力を頼りに生活をされています。

H兄のお見舞いに行く度に、かえってこちらが励まされるという方は、きっと私だけではないと思います。ご不自由な中でも日々の生活を工夫されて、市民図書館から録音図書を送ってもらい、さまざまなご本を聞いておられます。また、教会からのメッセージCDを毎日聞いてくださり、自らの信仰を養っておられます。

H兄は「人の肉体はどうしても次第に衰えていく、これはどうすることもできない。けれども、人の心は永遠に生きるから、肉体の健康も大事ではあるけれど、心の健康がもっと大事だと思う。CDメッセージを聞くことによって心が安定していることが本当にありがたい。感謝です」とよくおっしゃいます。

考えようによっては、突然目が見えない状況に陥れば、気持ちがふさいで、うつ的になっても不思議ではありません。そんな中で、生活にいろいろな工夫を凝らして、耳から知識を得ようとするばかりか、神様の御言葉で心を満たそうとしておられるH兄の姿勢に大変励まされます。

そのような不自由な生活でありながら、前向きに生きようと努力し、狭い病室の中でも体をできるだけ動かして歩けるようにし、看護師さんやお掃除をしてくださる方々や食事を運んでくださる方々の名前を全員覚えて会話をしていらっしゃいます。また、写真にあるように、目が見えないために文字が斜めになったり、ある時は間違えたりしながらも、私たちの教会のことを覚えて祈ってくださり、CDを使って同時に礼拝を守ってくださり、尊い献金をいつも送ってくださるH兄の生き方そのものの中にキリストの御姿が形造られていることを思い、主の御名を心から賛美するのであります。

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福江等

福江等

(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001~07年、フィリピンのアジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

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