2017年7月6日07時43分

温故知神―福音は東方世界へ (75)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本20 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

温故知神―福音は東方世界へ (75)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本20

<本文と拓本>32文字(580+32=612)

聖無常體(聖に常体無く)、随方設教(方に随い教を設け)、密濟群生(密に群生を濟え)。大秦國大徳阿羅夲(大秦國の大徳阿羅本は)、遠将經像(遠く經像を将し[注])、来獻上亰(来りて上京して獻ず)。詳其教旨(其の教旨の詳は)、玄妙無為(玄妙で無為)。

<現代訳>

「道の名は知られず、そのような聖もない。だから、多くの民に教えを説き、民を救え」と。大秦国の宣教師阿羅本は、遠方より経典と像を携えて上京し、献上しました。「その教えを詳しく知れば、奥深くて人知を超え、

<解説>

宣教師と供の者たちは太宗皇帝に対し、ペルシャから唐に来た理由を伝えた。そして自分の信じる神や救い主イエス、聖書やペルシャの地理に関して伝えた。また、図書館では聖書を漢訳し、やがて3年が経過すると、皇帝は宣教の許可を与え激励した。彼らは皇帝にシリア語の聖書類、漢訳本やイコン(聖画類)を献呈した。この時期に『一神論』や『序聴迷詩所(イエス・メシア)経』、その他の翻訳本が編さんされたと考えられる。

宣教師は入国する国の事情をよく理解することが大切で、特に現地語を習得し、文化や宗教や経済など、皇帝に関する事柄も知ることが大切である。何も知らないなら宣教する資格はないといえよう。

主イエスは自分を愛するように隣人を愛することを教えられた。愛するとは、相手を知り理解を深めることである。しかし、主の教えをもって毅然(きぜん)とした態度が相手に良い影響を与えることを忘れてはならない。

阿羅本宣教師は、大徳という称号を皇帝から受けた。キリスト信仰者として毅然とした態度で皇帝や総理大臣、官僚たちに接し、良い影響を与えた人物であったと考えられる。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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