2017年3月2日11時55分

温故知神—福音は東方世界へ(67)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本12 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

温故知神—福音は東方世界へ(67)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本12 川口一彦

<本文と拓本>32文字(296+32=328)

含靈於是乎既濟(含靈<人>は是においてや既に濟われる)。能事斯畢(能事、斯に畢〈お〉わり)、亭午昇真(亭午に昇真する)。經留廿七部(經は27部をとどめ)、張元化以發靈閞(元化を張り、もって靈閞を發す)。法浴水風滌浮華

<現代訳>

こうして人は救われ、救いの御業は完了し、太陽が真昼の上に昇りつめたさまのようです。新約聖書は27部をとどめ、(神との)関係に返るため霊を降された。主の教えと洗礼と浄風の働きは、心の汚れを洗い流し、聖化に導かれた。

<解説>

太陽が真上に昇りつめていくことと、船が掉さして天辺に昇る表現は、古代エジプトや西洋では太陽信仰の1つです。しかし、この箇所は太陽信仰ではなく、イエス・メシアが死から復活し昇天されたことに重ね、信徒たちも天に昇っていくさまを実体的に表現しました。事実、人が死から復活し昇天したのはイエス・メシア以外になく、他宗教はそれを理想化し偶像化したものでしょう。

碑が建てられた781年の唐代に新約聖書が27部と刻まれていることは、聖書が正しく伝えられ、訳されていたとも考えられます。現在、聖書あるいは分冊聖書が発見されていないことが残念です。635年に作成された『尊経』には、聖書と多くの教義書などの翻訳があったと記されています。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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