2017年2月21日12時38分

英語お宝情報(4)ピッチは和製英語タイプ6 木下和好

コラムニスト : 木下和好

英語お宝情報(1):スピーキング脳とリスニング脳

By Dr. K. Kinoshita(木下和好)
YouCanSpeak 開発者・同時通訳者
元NHK TV・ラジオ 英語教授

pitch(ピッチ)の歴史は長く、ノアが箱舟を造ったときにも防水用として使われた。”make rooms in the Ark and coat it with pitch inside and out.「箱舟の中にへやを設け、ピッチでそのうちそとを塗りなさい」”(創世記6:14)

pitch という言葉には「アスファルト」以外にも幾つかの意味があるが、日本ではピッチが英語の pitch とは別の意味で使われているので、英語で話すときにはそのまま使うことができない。

<英語スピーキングのための重要ポイント>

英語を自由に、また上手に話せるようになるためには、次の6つが重要ポイントとなる。

1. 適切な単語を適切に使える
2. 適切な発音ができる
3. 適切な英文を瞬時に作り、また音声化できる →(YouCanSpeak の使命)
4. 強い習得願望を持つ・絶対的必要性を感じる・楽しさ / ワクワクを実感
5. 習得能力を信じる
6. 適切な学習法で学ぶ

日本では簡易英語辞典に匹敵するほどの数の和製英語が使われている。これらの和製英語は、英語スピーキング力アップのための6重要ポイントのうち「1. 適切な単語を適切に使える」と「2. 適切な発音ができる」の2つに、大きなマイナス影響を与えている。と同時に、そのまま英語としては使えない和製英語に少し手を加えて再利用できるようにすると、英語力を一気に伸ばすことも可能となる。

<和製英語のタイプ>

1. 英語として全く使い道がない
2. 日本語と英語の合成語
3. 発音が本来の英語からかけ離れている
4. 意味が本来の英語とは異なる
5. 品詞(動名詞とか過去分詞 etc)の使われ方が本来の英語とは異なる
6. 元の英語と同じ意味であると勘違いされている和製英語

<ピッチの日本での使われ方>

ピッチという英語の単語は日本語の中に溶け込んでいて、テレビのニュースの中でも、あるいは新聞・雑誌などでも頻繁に使われている。特に時間的制約がある事柄に関して、「工事が急ピッチで進んでいる」とか、「ピッチを上げないと間に合わない」とかいう表現を使う。日本人全員がその意味を100パーセント理解しており、ピッチの使い方に疑問を抱く人はほとんどいない。すなわち、日本で言うピッチと英語の pitch は同じ意味であると思われている。

英語お宝情報(4)ピッチは和製英語タイプ6 木下和好

私がNHKの英語番組を担当していたとき、「急ピッチで、とか、ピッチを上げると表現しても、スピードを上げるという意味にはなりません」と言ったところ、「あなたは英語の基本を知らない!」という抗議のはがきが届いた。念のため、10人の米国人と英国人の友人に電話で再確認したところ、全員が日本人は pitch の意味を勘違いしていると言った。

日本では、「ピッチを上げる・急ピッチで・急ピッチで生産する・急ピッチで進む・~の準備を急ピッチで進める」などの表現がよく使われるが、全て「ピッチ」が「スピード」の意味になっている。いつ誰がどんな理由でピッチにスピードという概念を付加し、普及させてしまったかは分からないが、英語の pitch にはスピードの概念はない。

英語の pitch の代表的な意味は、以下の通りである。

1. 音の高さ
2. サッカーなどのグラウンド
3. 野球の投球(pitcher は pitchする人の意味)
4. 屋根の傾斜
5. 感情などの度合い
6. コールタール

本来、Pitch は波形の山と山、あるいは谷と谷の距離を示す言葉なので(あるいはそれに類似した意味)、音の場合、ピッチを上げると音は高くなるが、スピードが上がることはない。

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英語を話すとき、日本式ピッチの概念を表現したい場合は、次のように言えばよい。

「急ピッチで」→ at a rapid pace / at high speed など
「ピッチを上げる」→ speed up / move into higher gear など
「急ピッチで生産する」→ produce at a rapid rate など
「急ピッチで進む」→ move ahead at a fast pace / pick up speed など
「~を急ピッチで進める」→ put ~ on a fast track など

<ピッチを本来の英語の意味として再利用>

ピッチが和製英語だからといって、記憶から消し去ってしまう必要はない。せっかく慣れ親しんだ単語なので、意味に修正を加えるだけで、いろいろな表現ができるようになる。

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pitch speed =野球の投球スピード
best pitch =野球の決め玉
high pitch=野球のハイボール
low pitch =野球のローボール
highest pitch =最も高い音
perfectpitch =絶対音感
poor pitch singing =音痴
quick pitch =(反則投球)打者が構えていないのにピッチャーが球を投げること

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木下和好

木下和好

(きのした・かずよし)

1946年、静岡県生まれ。文学博士。東京基督教大学、ゴードン・コーウェル、カリフォルニア大学院に学ぶ。英会話学校、英語圏留学センター経営。逐次・同時両方向通訳者、同時通訳セミナー講師。NHKラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授。民放ラジオ番組「Dr. Kinoshitaの英語おもしろ豆辞典」担当。民放各局のTV番組にゲスト出演し、「Dr. Kinoshitaの究極英語習得法」を担当する。1991年1月「米国大統領朝食会」に招待される。雑誌等に英語関連記事を連載、著書20冊余り。

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