2016年12月8日12時17分

温故知神—福音は東方世界へ(61)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本6 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

温故知神—福音は東方世界へ(61)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本6 川口一彦

<本文と拓本>32文字(137+32=169)
大於此是之中隟冥同於彼非之内是以三百六十五種肩随結轍競織法羅或指

<注>
大於此是之中(平大の間、この是の中において<創造主と人との中に入り込む>)、隟冥同於彼非之内(彼<サタン>の非の内において暗き隙間ができ)。是以三百六十五種肩随結轍(是により肩随い轍を結ぶ)。
競織法羅(競って法羅を織り)、或指物(あるいは物を指し)

<現代訳>
人の本性は悪に傾かず、純真な心は他のものを求めませんでした。ところがサタンは身を飾って惑わし、真の主と人との間に隙を入れ、闇の心を邪悪に変え、365種(人類)がサタンに従い、好き勝手に生きるようになりました。
人は競って法を作り、物を神として宗教を作り(続く)

<解説>
この個所は、創世記3章のサタンの誘惑に陥り、神との関係が破壊され、全ての人が自分勝手に生きたことを記したものです。

365種については諸説があり、その1つに、多くの宗教や流派。2つに、1年間に人が犯す罪。3つに、アブラクサスはギリシャ語で αβραξας となり、それを数詞にすると α=1、β=2、ρ=100、α=1、ξ=60、α=1、ς=200で、これを合計すると365になり、アブラクサスは異教の神であるデミウルゴスで、古代キリスト教異端者バシレイデス(Basilides、紀元130年ごろ)やヴァレンティノス(Valentinus、紀元2世紀中ごろ)が教えた説があります。同じ数が「大秦景教宣元本経」にも出ます。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

愛知福音キリスト教会(日曜と火曜集会)ならびに名古屋北福音キリスト教会(水曜集会)の宣教牧師。フェイスブックで「景教の研究・川口」を開設。「漢字と聖書と福音」「仏教とキリスト教の違い」などを主題に出張講演も行う。書家でもあり、聖書の言葉を筆文字で書いての宣教に使命がある。大学や県立病院、各地の書道教室で書を教えている。基督教教育学博士。東海聖句書道会会員、書道団体以文会監事。古代シリア語研究者で日本景教研究会代表。特に、唐代中国に伝わった東方景教を紹介している。著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』など。