2016年12月6日19時50分

FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道

コラムニスト : 西村晴道

ナマクワランドのナバビープ教会堂(神に集められた教会)
訪問 2016年9月5日

FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道

年に1度だけ、乾燥地帯のごつごつした岩の荒れ地に花が一面に咲く。地域により、オレンジ、黄色、ピンク、紫、白、ミックスなど色鮮やかな花が咲き乱れ、美しい花園になる。

数年前、レストランで背の高いウェイターに会い、出身を尋ねると南アフリカだと言う。ぜひ行きたいと話すと「ナマクワランドに行ってみてください。年に1度、砂漠に花が咲くすごく美しい所です」と聞いた。名前も知らない所、限られた時期だけしか見られない花園とはどんなものかと頭から離れず、時満ちて念願の旅が実現した。

ケープタウンからナマクワランドへ

FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道
FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道

雨の朝、「ナマクワランド」へ向かう。ケープタウンから北上してスプリングボックへ片道550キロ。2泊3日のドライブツアー、あちこち回ったので3日間で走行距離1600キロ。

ドライバー兼ガイドはクライブさん。背が高く強そうでボディーガードとして安心、見た目は怖いが気は優しくて、花の名前も覚えているし、きれいな花の場所も知っている、小さな豆粒ほどの多肉植物も、これだと図鑑を示して、詳しい。遠くにいるダチョウ、シマウマ、毒ヘビなどの動物も鋭い目で見つけて教えてくれる。

FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道
FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道

川にかかる美しい橋、まっすぐな並木道、小麦畑が続く。

ナマクワランドでは、年に1度8月末から9月初めの2週間だけ砂漠に花が咲く。花は晴れているときだけ開くというので天気を心配したが、午後は雨が上がった。

時は春、緑の原には黒い牛がゆったり草を食み、黄色の菜の花畑、ブドウ畑が広がり、なだらかな起伏の多い道を進んで行く。

山を登ると眼下に美しい眺め、山を下りるとオレンジの木がたくさん植えられている。この地方はオレンジとルイボスティーの産地。世界でここだけにしか栽培されていないルイボスティーは、カフェインレスで健康に良い。

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南アフリカの9月は春
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途中にはブドウ畑が広がる、有数のワイン産地クラワー醸造所(ワイナリー)に立ち寄る。ワインはボトル1本25ランド(日本円で約204円)。安い!
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起伏に富んだ道路沿いの景色、この地域は紫色の花。春から夏は緑で美しいが、秋から冬は荒れ地と化すという。
FINE ROAD―世界の教会堂を訪ねる旅(37)南アフリカ共和国の教会② 西村晴道

花は太陽に向かって開く。曇っていると花は閉じてしまう。

天気のいい日の10時から16時くらいの時間だけ。その年の雨や気候の状況によって、咲く時期や場所が変わってくる。ガイドは一番美しい見どころをよく知っている。

クオバツリーQuiver Tree、アロエの木

サン族がこの木の樹皮を使って矢筒(Quiver)を作ることから、こう呼ばれるようになった。

北ケープ州とナミビアの一部でしか見られない珍しいもの。12メートルほどの高さにまで成長し、樹齢400年も生きる。

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ナバビープ教会堂

スプリンブボック Springbok の近くの町、ナバビープ Nababeep にある教会。

ナバビープはかつて銅山の町として栄えたが、10年ほど前に廃鉱となり、現在は貧しい人々が住むさびれた所となってしまったという。人影まばらな町に、夕暮れの風は静かに吹き、白い教会が尖塔を突き上げて建っていた。

Assembled by God(神に集められた教会)と書かれていた。

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有刺鉄線で囲まれた教会敷地
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正面
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玄関
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尖塔と小さな鐘

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西村晴道

西村晴道

(にしむら・はるみち)

1948年、靜岡県生まれ。一級建築士。法政大学工学部建築学科卒。住友建設株式会社入社・退職し、米ソービック建築設計事務所短期留学を経て、84年に西村建築設計事務所開設。ルーテル学院大学第10回リード賞(キリスト教芸術分野)受賞。日本福音ルーテル教会員。著書に『FINE ROAD―世界のモダンな教会堂をたずねて』。