2016年10月27日22時50分

温故知神—福音は東方世界へ(58)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本3 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

温故知神—福音は東方世界へ(58)大秦景教流行中国碑の現代訳と拓本3 川口一彦

<本文と拓本>30文字(47+30=77)
元尊者其唯 我三一妙身 无元 真主 阿羅訶 歟判十字以定 四方皷元風而生

<注>
元尊者其唯(元尊はそれただ):元尊とは、最高のお方の尊称で中国の史書の漢書にも出、至高者のこと。
我三一妙身:三位一体の略でそれを漢文で最初に表現したのは景教碑文です。ここでは父なる神を指す。妙身とは優れて巧みな方。
无元 真主 阿羅訶(初めのない真の主、阿羅訶):阿羅訶は、創世記1章1節の神と和訳した原語ヘブル語のエロヒームからシリア語に訳し、それを漢語に音訳しました。当時の宗教語として古代中国で使われていました。
歟判十字以定(十字を分けて定め)
四方皷元風而生(四方から鼓をした元風は<二氣を>生じた):四方とは東西南北のあらゆる方面のこと。鼓は鼓(つづみ)が音を出したときのように奮起する意味。

<現代訳>
最高に尊いお方は、私たちの三一の優れたお方、初めもなき真の主アラクァ(創世記1章1節の「神」はヘブル語でエロヒーム<複数形で、力を意味する>。それをシリア語から漢語にしたのが阿羅訶)です。この方は十字を分けて定め、四方から奮起した元風は二氣を生じ

<解説>
三一の父なる神による天地創造の要約が書かれています。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教のたどった道―東周りのキリスト教』(キリスト新聞社、2005年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

愛知福音キリスト教会(日曜と火曜集会)ならびに名古屋北福音キリスト教会(水曜集会)の宣教牧師。フェイスブックで「景教の研究・川口」を開設。「漢字と聖書と福音」「仏教とキリスト教の違い」などを主題に出張講演も行う。書家でもあり、聖書の言葉を筆文字で書いての宣教に使命がある。大学や県立病院、各地の書道教室で書を教えている。基督教教育学博士。東海聖句書道会会員、書道団体以文会監事。古代シリア語研究者で日本景教研究会代表。特に、唐代中国に伝わった東方景教を紹介している。著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』など。