2016年9月2日14時30分

ヤジディ教徒の少女、「イスラム国」の性奴隷にされないため自分の身に火

翻訳者 : 山本正浩

9歳のヤジディ教徒少女、IS戦闘員に強姦され妊娠 出産時に死亡する可能性も
イラクのクルド人自治区でヤジディ教徒に支援物資を届けているところ。(写真:Defend International)

十代の少女ヤスミンさんが、生きたまま自分に火を付けたいきさつを語った。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)によるレイプや拷問を逃れるためだったという。

現在ドイツに避難しているヤジディ教徒のヤスミンさんは、16歳の時にISに捕らえられ、7日間監禁された。何とか脱出できたヤスミンさんは、イラクの難民キャンプに行ったが、再び捕らえられる危険にさらされていた。身を守るため、自分の体を灯油に浸し、醜い姿になるためにわざと火を付けたという。

「あの人たちの声が耳に残っていました。(中略)あの人たちの声が聞こえて、とても怖かったんです」「もう耐えられませんでした。あの時はそういう状態でした」と、ヤスミンさんは米ニューヨーク・ポスト紙に語った。

ドイツにはISから逃れてきたヤジディ教徒の女性が約1100人いるが、トラウマ状態にあるため心理学者らによる治療を受けている。今は18歳になったヤスミンさんもその1人だ。彼女たちは全員、2年間ドイツに留まる許可を得ている。

ヤスミンさんと妹は、ISから逃れるために山間部に隠れていた。今は両親とも再会し、妹と2人の兄弟もドイツにいる。

「ISのイデオロギーでは、ヤジディ教徒たちは人間ではないのです」と、避難民の心理治療を指導するドイツ人医師、ジャン・イルハン・キジルハン氏は同紙に語った。「ナチス政権時代は、ドイツ人もユダヤ人に同じ扱いをしました」

ISが2014年8月にイラク北部のシンジャル地方に侵攻したときには、数千人の女性や少女らがISの兵士らに誘拐された。数百人の市民が殺害され、40万人余りが避難を余儀なくされた。約5千人が捕えられ、そのうち約3千人が今も捕虜になっていると考えられている。

逃亡してきた女性や少女らは、残虐な虐待の様子を伝えている。彼女たちはたった1箱のタバコと物々交換され、性奴隷として地下牢(ろう)に閉じ込められた。

ヤジディ教はゾロアスター教の分派で、古代宗教の伝承と、キリスト教やイスラム教の混合宗教である。ISはヤジディ教徒が「悪魔崇拝者」だと信じている。