2016年8月11日12時09分

死に勝るいのちを得て―がん闘病817日の魂の記録―(80)病院に行くたび思い出すこと 米田武義

コラムニスト : 米田武義

病院に行くたび思い出すこと

私は今、週1~2回、病院に通っている。通院しながら治療をしている。ほとんど早朝に行くが、行くたびに別の世界に入り込む気がする。私は今病気ではあるが、普段は家庭を中心に生活をしていて、病院中心の入院生活をしている訳ではない。

だからなおさら“ああ、病気と共に一日中生活している人たちがいるのだ”という思いを強くする。そして、自分が入院していたときのことを必ず思い出す。

朝から晩まで、時には深夜にも検査をしたり、治療をしたり、いろんなことがあったことを思い出す。健康な時には思いもよらぬことでも、次第に慣れて、多少なりとも覚悟とか忍耐とかが、その時は備わったと思う。

健康な時には分からなかっただけで、常に健康と裏腹に病気という負の側面も持っていたのだと思う。病院に行くたびに、良いも悪いも含めた原点に戻される思いがする。そして、謙虚な思いにさせられる。

感謝することに関しては、もう数え切れないほど挙げられる。いろんな助けや治療は、皆人を通じて行われてきた。神様がその人の背後で働いておられる。

神様はもちろん、私の内にあっても常に支えてくれた。私に信じられないくらいの楽天的な精神を与えてくれた。私は、これは本当に奇跡に近いことに思える。1年前のことを今考えてみると、本当に神様の力には驚くばかりである。

昨日、礼拝のメッセージでヨブ記が取り上げられたが、神様を肯定的にとらえることのできるときは、本当に幸せである。

「神はある方法で語られ、また、ほかの方法で語られるが、人はそれに気づかない」(ヨブ記33:14)

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米田武義

米田武義

(よねだ・たけよし)

1941年4月16日、大阪生まれ。大阪府立三国丘高等学校、国立静岡大学卒業。静岡県立清水東高校定時制教師を勤めた後、東北大学大学院、京都大学大学院(国土防災技術国内留学生)で学ぶ。国土防災技術を退職し、米田製作所を継承する。2008年4月8日、天に召される。著書に『死に勝るいのちを得て―がん闘病817日の魂の記録―』。