2016年8月8日00時28分

ポジティブ心理学 安食弘幸(49)

コラムニスト : 安食弘幸

「フロイト以来の革命的理論家」といわれる、米国ペンシルバニア大学教授の心理学者マーティン・セリグマン博士は、10年前に米国心理学会の会長に就任したとき、次のように言いました。

「20世紀の心理学が、肝心なところで人の助けになっていないことに気付いた。つまり、心理学者は憂鬱(ゆううつ)、精神的外傷、苦難といった否定的なことばかりを研究してきた。その結果、心理学は精神障害のための学問のようになってしまっている。本来、心理学は、弱さや障害だけを研究するものではなく、人間の優れた機能を研究するものであるべきである」

そこで博士は、幸せになるための心理学「ポジティブ心理学」を提唱しています。つまり「心理学の応用は弱いところを補い、補助するためでなく、人間の持つ良いものを育むということにも向けられるべきである」というのがポジティブ心理学です。

現在、500人の心理学者と千人の人々が、ポジティブ心理学を実践しています。

これらのポジティブ心理学者たちが挙げる、「幸福な人生を構成する8項目」というものがあります。

  1. 祝福を数える
  2. 親切を実行する
  3. 人生の喜びを味わう
  4. 良き指導者に感謝する
  5. 赦(ゆる)すことを学ぶ
  6. 友人や家族のためにお金とエネルギーを投資する
  7. 体の健康に留意する
  8. ストレスや困難への対策手段を持つ

そしてさらに「幸福を構成する3要素」として次のものを挙げます。

  1. 笑顔(楽しみを持つこと、前向きな感情)
  2. 何かに深く携わる人生(自分を忘れるくらい夢中になれる仕事、ボランティア活動、趣味を持つ)
  3. 意味のある人生(自分の才能、能力、財力をささげ、自分の命よりも大きなものに仕えるという使命を持つ)

新約聖書<ヨハネの福音書20章19~22節>に次のような記事があります。

その日、すなわち週の初めの日の夕方のことであった。弟子たちがいた所では、ユダヤ人を恐れて戸がしめてあったが、イエスが来られ、彼らの中に立って言われた。「平安があなたがたにあるように。」

こう言ってイエスは、その手とわき腹を彼らに示された。弟子たちは、主を見て喜んだ。

イエスはもう一度、彼らに言われた。「平安があなたがたにあるように。父がわたしを遣わしたように、わたしもあなたがたを遣わします。」

そして、こう言われると、彼らに息を吹きかけて言われた。「聖霊を受けなさい。」

復活したイエス・キリストが、恐れている弟子たちに与えたものは、まさに上記の3つのものでした。

  1. イエスは「シャローム」と言って、平安と喜びを与えました。
  2. イエスは「あなたがたを遣わします」と言って、弟子たちが没頭すべき仕事を与えました。
  3. イエスは「聖霊を受けよ」と言って、この働きは神からの使命であり、神への献身であると示しました。

現代の心理学者たちが提唱していることを、イエス・キリストは実に2千年も前から実践していたのです。

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安食弘幸

安食弘幸

(あんじき・ひろゆき)

峰町キリスト教会牧師。1951年、島根県出雲市に生まれる。関西学院大学社会学部卒。大学時代は硬式野球、関西六大学リーグのスラッガーとして活躍。関西聖書学院卒。セント・チャールズ大卒(哲学博士)。JTJ宣教神学校講師、国内外の教会や一般企業、ミッションスクール、病院、福祉施設などで講演活動を行っている。著書に『キリストを宣べ伝える―コリント人への手紙第二』『心の井戸を深く掘れ』『道徳力―モーセの十戒に学ぶ―』『ルツの選択、エステルの決断』など多数。

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