2016年7月21日14時18分

温故知神—福音は東方世界へ(51)景教小事典⑥ 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

中国唐代のイエスを信じていた景教徒リーダーの名称について

どの時代にも、どの教会共同体にも、信徒数が増加すれば教会組織の運営・管理がなされていきます。

主イエス様は、まず主のしもべである使徒たちを選んで信仰の訓練と霊的な力を与え、神の言葉の宣教によってイエスを主キリストと信仰告白した神の国民を信仰の一致に導き、昇天された後も教会が主イエス様のために働けるよう指導しました。

初代教会の組織には、使徒、預言者、牧師、教師、監督、長老、執事、巡回説教者などが立てられていました。(新約聖書の福音書やパウロの手紙他に掲載)

さて景教会衆の指導者の名称について紹介します。「大秦景教流行中国碑」の文章にはシリア語で肩書が彫られています。(拓本の一部で紹介)

温故知神—福音は東方世界へ(51)景教小事典⑥ 川口一彦

漢訳すると、大司教、総主教(パパシュ)、上徳、大徳、長老、法主、執事長、僧などとあります。僧と書かれた肩書のある人物はシリア語名も書かれ、約70人以上の名前が彫られています。しかし、僧といっても当時はどの宗教教団の指導者も僧と呼んでいました。現代は、僧の肩書は仏教指導者だけのものですが、当時はイスラム教も含め全ての宗教指導者は、僧、大徳、上徳とも呼んでいました。

紀元635年、ペルシャから唐に布教のために派遣されてきた初代宣教師の阿羅本(アラベン)は、大徳、大法主とも呼ばれていました。

現代人が現代的な文字感覚で読むなら大きな誤解を招き、仏教の影響を受けたとも言いかねません。そうした当時の社会事情を知ることにより、当時の文章を読み解く上で、正しい理解を得ることになるでしょう。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教のたどった道―東周りのキリスト教』(キリスト新聞社、2005年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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フェイスブック「川口一彦」で聖句絵を投稿中。また、フェイスブック「景教の研究・川口」でも情報を発信している。

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