2016年7月9日23時43分

死に勝るいのちを得て―がん闘病817日の魂の記録―(75)老いても実を実らせる 米田武義

コラムニスト : 米田武義

老いても実を実らせる

人と交わりを持っているときに、時々我に返るときがある。そして“ああ、いつまでも若い時の気持ちのままではいけない”とか“年をとっているということに甘えてはいけない”とか思うことがある。

また自分と同年齢の人たちを見ていて、同じ世代の人として好ましく思える人と、そうでない人がいることにも時々気付く。好ましくない年配は、元気がない。何となく年寄りという名に甘えているような人々であり、好ましく思える人たちは、元気があり、依頼心がなく、甘えた心がないように思える。

年をとるにつれ、行動が若い時のように積極的、広範囲ではなく、いろいろ制約を受けるようになるのは、生理的にも仕方のないことであるが、年寄りらしくすることと、年寄りらしくしないことが大切である。

年寄りらしくせよとは、自分を客観的に見て、よく知っているということである。特に身体的な衰えはどうしようもない。また年齢も然りである。これらをあるがまま受け止めて、それ以上でも以下でもなく素直に認めることが大事である。見栄を張って若ぶっても仕方がない。

年寄りらしくするなとは、年寄りという名に甘えるなということである。必要以上に年寄りらしくして、憐れみを買ったりするのは、まことに見ていて見苦しい限りである。年をとっても自立心を持ち、独立の精神を常に持つことは、肝要である。

「彼らは年老いてもなお、実を実らせ、みずみずしく、おい茂っていましょう」(詩篇92:14)

「年老いて、しらがになっていても、神よ、私を捨てないでください。私はなおも、あなたの力を次の世代に・・・告げ知らせます」(詩篇71:18)

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米田武義

米田武義

(よねだ・たけよし)

1941年4月16日、大阪生まれ。大阪府立三国丘高等学校、国立静岡大学卒業。静岡県立清水東高校定時制教師を勤めた後、東北大学大学院、京都大学大学院(国土防災技術国内留学生)で学ぶ。国土防災技術を退職し、米田製作所を継承する。2008年4月8日、天に召される。著書に『死に勝るいのちを得て―がん闘病817日の魂の記録―』。