2016年6月23日16時55分

温故知神—福音は東方世界へ(49)景教小事典④ 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

聖霊(浄風)に関して唐代の景教徒たちはどのように理解し、伝えていたのか。

聖霊の用語は「浄風」「元風」「涼風」があり、他にシリア語の「Ruha(霊)」「dekudsa(聖)」から漢訳し「蘆訶寧倶沙」と書き、尊経に1回出ます。シリア語の霊の漢訳として「囉嵆」(読み不明)があり、志玄安楽経に2回出ます。

浄風はきよい風から聖書的かと考えます。唐代には「霊」の用語の使用はなく、人の霊魂と混同することから使用しなかったかと考えます。景教碑に「三一浄風は、言なく新教により人を救い正しい信仰へと導いた」と教えています。世尊布施論には、マタイの福音書28章19、20節を「父子浄風の字(名)で水に向かわしなさい」とあります。

古代教会は聖霊の用語や使用について、古ローマ信条(最古の教会信条)やニケア信条においても多くは語らず、「我は聖霊を信ず」だけです。新約聖書では聖霊が多く語られています。それは聖霊降臨後に福音を宣教し、教会を設立した方は聖霊自身であるからです。特にヨハネ福音書3章には聖霊を風に例え、風として唐代にも伝わり、元風、浄風と漢訳したのかと考えます。

温故知神—福音は東方世界へ(49)景教小事典④ 川口一彦

浄風 ➡ 景教碑に2回。一神論の世尊布施論に5回。三威蒙度論に2回。
涼風 ➡ 序聴迷詩所経に6回。
元風 ➡ 景教碑に1回。
囉嵆 ➡ 志玄安楽経に2回。
蘆訶寧倶沙 ➡ 尊経に1回。

※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
『景教のたどった道―東周りのキリスト教』(キリスト新聞社、2005年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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