2016年6月22日21時50分

そうじ力(4)捨てる痛み 菅野直基

コラムニスト : 菅野直基

神学生時代、「伝道者のツールは本ですよ」と教えられました。ある日、先輩牧師の自宅に招かれて遊びに行きました。その先生は、部屋中に特注の本棚を設置して、リビング、寝室、書斎、応接間に至るまで本だらけでした。

「さすが伝道者!」と尊敬しました。牧師は、毎週日曜日の説教のほかに、平日の祈祷会など、数回違う説教をする必要があります。絶えずインプットしていないと、説教がマンネリ化してしまいます。

ある僧侶と親しくなり、私が、毎週違う説教を信者さんに語っていることを話したら、とてもびっくりしていました。しかし、いろいろな本を読みあさったからといって、簡単に説教の準備ができるわけではありません。祈り、語る説教箇所を繰り返し読むことが説教準備の核です。

あとは、違う日本語訳の聖書、数種類の注解書、ヘブル語とギリシャ語の原典聖書があれば、それ以外は、雑学や時代を知るために読む数冊の本以外、読むことはありません。

つまり、100冊中1冊読むか読まないかです。100冊中99冊は要らない物ということになります。捨てるのはもったいないので、何十箱分もの本をブックオフのような本屋さんに売りました。

多くの本は1冊1円でした。価値がある本で300円くらいでした。本を買うときには2千円で買っても、売るときには1円なんてもったいないなあと、心が痛みます。私は、この痛みを大切にしています。次に本を買うときに、じっくり考えるようになるからです。

著名な牧師の講演会に行くと、受付で著書が販売されます。講演記念や出版記念で「本日限り1800円のところ1500円で販売します」。「本を買ってくださった方にはサインをいたします」。多くの人が本を買います。私は、本を捨てる痛みから、本を買うことには慎重です。

付き合いで買うことはありますが、反対に付き合いで「差し上げますよ」と下さることもよくあります。もらった本よりも自分で買った本の方が読破率は高いものですが、私は買っただけで満足して、読んでしまったような気になります。むしろ、講師が直々に私に本をプレゼントして下さったときの方が、自腹を切ってくださっている場合がほとんどですので、その好意に感謝して一読します。

物を捨てる痛みは、大切な痛みです。ある人は、その痛みによって今までの半分くらいの買い物をやめるようになります。ある人は、十中八九の買い物をやめる人もいます。

捨てる痛みは、不要なものを衝動的に買う弱さから私を守ってくれています。不用品と必要品を区別し、不用品を思い切って捨てることで感じる痛みは、祝福をもたらします。人生に無駄はありません。

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菅野直基

菅野直基

(かんの・なおき)

1971年東京都生まれ。新宿福興教会牧師。子ども公園伝道、路傍伝道、ホームレス救済伝道、買売春レスキュー・ミッションなどの地域に根ざした宣教活動や、海外や国内での巡回伝道、各種聖会での賛美リードや奏楽、日本の津々浦々での冠婚葬祭の司式など、幅広く奉仕している。日本民族総福音化運動協議会理事。

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