広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月に自殺した問題で、男子生徒が万引きをしたとする誤った記録に基づき、学校側が志望校への推薦をできないと説明し、万引きがあったことを保護者に話すと伝えた日に男性生徒が自殺していたという。国内主要各紙が伝えた。
朝日新聞や読売新聞などによると、自殺した男子生徒は公立高校を第1志望にしていたが、第2志望は校長推薦が必要となる私立高校だった。学校側は、男子生徒が1年時に万引きをしたとする誤った記録を残しており、担任教諭がこの誤記録に基づき、進路指導で推薦できないことを伝えていたという。
担任教諭は男子生徒が自殺する昨年12月8日まで計4回面談。同日朝、この日に予定されていた三者懇談で、万引きについて保護者に説明すると男子生徒に伝えていたという。男子生徒は三者懇談に姿を見せず、父親が同日夕方、自宅で自殺しているのを発見した。
朝日新聞によると、男子生徒が万引きしたとする記録は、学校内の会議で誤りが指摘されていたが、訂正されずにそのまま引き継がれていたという。万引きは実際には、別の生徒によるものだった。男子生徒の自殺後、誤った記録に基づく進路指導だったことが分かったという。
同紙によると、府中緑ケ丘中学校は男子生徒が自殺した翌日の昨年12月9日、全校集会で男性生徒が亡くなったことを伝えたが、こうした事実を約3カ月間公表してこなかった。産経新聞によると、府中町教育委員会は、公表しなかった理由について「遺族から要望があったため」と説明しているという。
共同通信によると、府中町教育委員会と府中緑ケ丘中学校は、誤った進路指導が男子生徒の自殺につながった可能性があるとして、保護者には昨年12月に既に謝罪している。府中町教育委員会の高杉良知教育長は「原因は他にもあるかもしれないが、誤った情報を基にした進路指導が原因としか思えない。亡くなった生徒に申し訳ない」と話しているという。
府中町教育委員会は8日夕、保護者説明会と記者会見を開いて説明するとともに、第三者委員会を設置して経緯を調査するという。