2015年12月24日07時45分

【クリスマスメッセージ】let it be 内村伸之・ミラノ賛美教会牧師

執筆者 : 内村伸之

let it be 内村伸之

クリスマスおめでとうございます。皆さんは、どのようにクリスマスを過ごしますか? 家族と? 大切な人と? パーティーを開いてにぎやかに祝う人もいるでしょう。

私が宣教師として遣わされているイタリア・ミラノは、ファションなどの文化トレンド発信地として知られるイタリア北部に位置する商工業都市です。

この街では盛大でにぎやかなクリスマスになるかと思われがちですが、実際は家で家族と一緒に食事をして、静かで温かなクリスマスを過ごします。

イタリアには、コンビニが一軒もありません。クリスマスの日は夕方になるとほとんどのスーパーやお店が閉まり、夜には町中に出ている人はほとんどいなくなって、ひっそりと静まります。そのような時、暗闇の中で照らし出されるイルミネーションの光は、「神様が私たちを愛しておられる」ということを思い出させるのです。

クリスマスとは何の日でしょうか。イタリアでは、クリスマスのことを「ナターレ」(natale)といいます。直訳すれば「誕生」「出生」という意味です。クリスマスとは、イエス・キリストが生まれたことを祝う日なのです。

聖書にはこのクリスマスの出来事が詳細に記されており、それは、御使いによる乙女マリヤへの受胎告知から始まります。

let it be 内村伸之

私が暮らすイタリアには、フラ・アンジェリコという画家が1440年に描いた、「受胎告知」という有名なフレスコの壁画がありますが、この絵は、御使いガブリエルがマリヤにイエス・キリストの懐妊を告げた際、それを受けてマリヤが語った言葉が主題となっています。(新約聖書・ルカによる福音書1章38節)

「マリヤは言った。『ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。』こうして御使いは彼女から去って行った」("And Mary said, "Behold, I am the servant of the Lord; let it be to me according to your word." And the angel departed from her." English Standard Version)

イエス・キリストの誕生は、処女の妊娠という超自然的な出来事から始まりました。マリヤは御使いに、「私は、まだ一度も男性と関係を持ったことがありません。なぜ妊娠が起こり得るのですか?」と尋ねました。

御使いは答えます。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方(神)の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます」(ルカによる福音書1章35節)

それを聞いたマリヤの返答が、前述の聖書の言葉です。マリヤは信仰により、処女受胎という常識ではあり得ないことを受け入れたのです。それは、ただ「神が成さることは成る」という、シンプルな信仰でした。

let it be 内村伸之

イエス・キリストの誕生はこのように予告され、実現しました。それでは、イエスは何のために生まれたのでしょうか。ここに、世界がクリスマスを祝う理由があります。それはキリスト教を始めるためではなく、イエス・キリストが私たちを救うためにお生まれになったからです。

私たち人間には本来、罪があります。自覚がない人もいるでしょう。けれども、他人のものを欲すること、憎むこと、うそを言うこと、悪口、虚栄心、傲慢(ごうまん)、怠惰・・・。人のそれらの性質が、実は神の前にみな罪なのです。そして最大の罪は、すべての創造主である神がおられるのにそれを知ろうともせず、まるで神がいないかのように好き勝手に振る舞うことです。この罪のせいで、私たちは神に近づくことができません。それどころか、永遠の滅びという罰に向かってひたすら進んでいるのです。

罪の問題は、人にはどうすることもできません。けれども神ご自身が解決の道を用意してくださいました。それが、イエス・キリストの誕生です。神はご自身の御子であるイエス・キリストをこの世に送り、十字架につけ、私やあなたの身代わりとして罰を受けさせることで、私たちの罪をあがなおうとされたのです。

神はなぜ、私たちのためにそこまでなさるのでしょうか。その理由はただ一つ、私たちを愛しているからにほかなりません。愛するがゆえに私たちを造り、愛するがゆえに罪によって関係が絶たれたことを嘆き、愛するがゆえにご自分の独り子をも差し出されたのです。クリスマスの出来事は、神の溢れるばかりの愛の表れです。

しかし、私たちが受け取ることなしに、この愛は発揮されません。受け取ること、すなわちイエス・キリストが私たちの救い主であると信じることです。このイエスを信じることで神との関係が修復され、やがて神のみもとに行くことができると聖書は伝えています。

マリヤは言いました。「あなたのおことばどおりこの身になりますように」。神がそれを必ず成し遂げてくださると信じたのです。今あなたも信じて受け取ってみませんか。神があなたを愛していることを。イエス・キリストがあなたの救い主であることを。私の心の暗闇を光に変えてくださることを。イタリアからも、お祈りしています。

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内村伸之

内村伸之

(うちむら・のぶゆき)

ミラノ賛美教会牧師。1969年東京都福生市生まれ。多摩美術大学卒業後、小笠原諸島父島へ移住。その後、東京都総合技術センター研究員を経て東京都立芸術高校美術科主任教諭。2003年11月、イタリア教会連盟より招聘を受け、イタリアにおいて日本人初の宣教師認定を受ける。現在はミラノをベースにしつつ、オランダ南部日本語キリスト教会の顧問牧師、バルセロナ日本語キリスト教会牧師、シオンの群教会(東京・中野)の宣教担当牧師などを兼務し、欧州と世界を飛び回る日々を送っている。