2015年6月24日23時00分

キリスト教出版のミライは!? 若手書店ボーイと牧師がトークライブ

キリスト教出版のミライは!? 若手書店ボーイと牧師がトークライブ
トークライブの登壇者ら。左から、司会のキリスト新聞と季刊誌『Ministry』の編集長である松谷信司氏、堺キリスト教書店店長の植田雄二さん、CLCブックスお茶の水店スタッフの内藤優祐さん、日本基督教団六角橋教会の加山真路牧師。「どんなことをモットーに客と接しているか」という質問に対して、植田さんも内藤さんも「できる限りお客さんの気持ちに応えたい、ニーズに応えるため100%の力を出していきたい」と答えた=23日、教文館(東京都中央区)で

キリスト教文書センター主催のトークライブ「戦う!書店ボーイ~キリスト教出版のミライ」が23日、教文館(東京都中央区)の3階ギャラリーステラで行われた。長引く出版不況やネットショップ台頭の影にある「リアル書店」の衰退、若者の活字離れなどがささやかれる昨今、「ことば」を基とした宣教や「知」の文化は生き残れるのか。2人の「書店ボーイ」と、読者の声を代弁する牧師を交えて、キリスト教出版界の未来を縦横に語り合った。

トークライブに登場したのは、書店側からは、共に30代だという、堺キリスト教書店(大阪府堺市)の店長、植田雄二さんと、CLCブックスお茶の水店(東京都千代田区)のスタッフ、内藤優祐さん。そして読者の代表として、日本基督教団六角橋教会(横浜市)の加山真路牧師。この日のプログラムは、「書店員あるある」をめぐる一問一答や、「キリスト教書ミニ・ビブリオバトル」など、若い年代を意識した内容で、約30人が集まった。

「書店員あるある」をめぐる一問一答では、司会を務めた、キリスト新聞と季刊誌『Ministry』の編集長である松谷信司氏が、3人の登壇者に向けて13の質問をし、それぞれが○×で答えた。その中で、出版元に対する質問で全員が○としたのが、「キリスト教の専門書は高過ぎる」「もっと売りたくなる本(買いたくなる本)を作ってほしい」で、逆に全員が×としたのが「キリスト教の新刊は多過ぎる」だった。

読者側の加山牧師は、キリスト教専門書の価格について「一牧師には高過ぎて、それで諦めた本もある」と言い、キリスト教専門書の図書館があってもいいのでないかと提案した。一方、書店側の2人は、「定価は出版元が決めることだが、売りたいと思う本が少ない」と言い、「もっと種類があったほうが牧師にも勧めやすい」と現場で感じていることを語った。司会の松谷氏も「一般書に比べ、キリスト教関係の新刊は少ない。若者向けの出版物と考えるならば、漫画とかまだまだあってもいいと思う」と言葉を添えた。

また、「売れている本が良い本だとは限らない」「キリスト教出版界にはまだ可能性がある」という質問にも全員が○を挙げた。植田さんは、「評判の良かった本の二番煎じが出たが、内容はまるで良くなかった。そういう本は売ろうと思えば売れるが、勧めたくはない」と言う。内藤さんは「良い本か悪い本かは主観でしかないので、自分に興味がなくても売らなくてはならない」と、書店は個人の好みを押し付ける場所ではないことを伝えた。

植田さんは、この頃の新刊には活字離れをしている人に対する試行錯誤が見えると言う。「これを読んだら、これも知りたくなる」という入り口になるような本が出てきていることに注目し、こういったものをもっと出版してほしいと要望した。また、日本の書籍の装丁の美しさに注目し、こういったことでもキリスト教書店・出版界は生き残れるのではないかと今後の可能性を語った。

内藤さんも、「お金にならないようなことでも、面白いことをやっていきたいと考える人が書店に1人か2人でもいればこの先変わっていく」と、キリスト教出版界の可能性を支持した。

キリスト教出版のミライは!? 若手書店ボーイと牧師がトークライブ
会場には約30人が集まり、キリスト教書店の現状や書店員の思いを共有した。「書店員あるある」をめぐる一問一答で出た、他の書店に行って乱れた棚を見るとつい直してしまうという話や、客から答えに窮するような困った問い合せを受けた体験談には、会場から大きな笑いが起こった。

加山牧師は、キリスト教書店と教会は「小さくても良いもの出している」という文化の担い手になるのではないかとコメント。「謙虚な業界であるキリスト教書店と教会がもっと協力してできることはたくさんある」と話し、牧師の責任を感じつつ応援していると読者側からの思いを語った。

会場からは、「古書店は脅威か」とか、「どんなことをモットーに客に接しているか」「何冊売れればヒットになるのか」「今一番面白いと思っている本は何か」「客のニーズを満たさない本を出す出版元に何か言いたいことはあるか」などの質問や意見が寄せられた。特に、客のニーズが共有できる場があれば、という意見には会場全体がうなずいた。

「キリスト教書ミニ・ビブリオバトル」では、登壇者3人がそれぞれ今読んでほしい本を持ち寄り、その理由について数分間のプレゼンテーションをした。植田さんは、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の絵本『わたしには夢がある』、内藤さんはピーター・L・バーガーの『現代人はキリスト教を信じられるか―懐疑と信仰のはざまで』、加山牧師は高橋洋代の『「星の王子さま」からのクリスマス・メッセージ』を思いを込めて紹介し、会場を盛り上げた。

最後に司会の松谷氏は、「今回初めてこういったキリスト教出版についてのイベントを行ったが、今後も書店や教会にも協力をいただいて、続けて開催していきたい」と語り、トークライブを締めくくった。

横浜から来たという50代の女性は、「書店側の内部事情が分かって面白かった」とコメント。出版に携わっているという60代の男性は、「30代の人の新しい視点からコメントをもらえて良かった。こういったイベントはこの業界にとって新しい出来事で、これまでの形式を破る動きが出てきたと思う」と言い、キリスト教出版界の今後の明るい展望を感じると語った。