教派を超えての賛美集会「教会音楽祭」の2013年6月の第31回目の開催を控え、テーマ曲の歌詞が参加する各教派の中で募集されている。今回のテーマは「ともに希望の歌を」。前回の第30回教会音楽祭に参加した教派は日本福音同盟に加盟する日本同盟基督教団と日本長老教会を含め、カトリック教会、カンバーランド長老キリスト教会、日本聖公会、日本基督教団、日本バプテスト連盟、日本福音ルーテル教会。
歌詞の応募は1人1作品で、未発表のものに限られる。集まった歌詞は教会音楽祭実行委員会で審査され、採用者に直接通知される。応募作品が採用候補作品となった場合でも作者と相談の上、実行委員会で添削する場合があるという。採用作品は広く教派を超えて自由に用いられるよう呼びかけられている。
教会音楽祭の第1回の開催は1968年にカトリック、聖公会、日本福音ルーテル、日本基督教団東京教区の4教派によって始まった。教会音楽祭の集会の案内と報告をするウェブサイトによると、参加教会に福音派のことばが見られるようになったのは2003年の第26回から。その後日本同盟基督教団と日本長老教会が2009年の第29回から教団として正式参加するようになった。
教会音楽祭に教団として正式参加する日本同盟基督教団の礼拝と教会音楽委員会委員長の井上義牧師(等々力教会)は6月27日に同教団ウェブサイト上に掲載された「礼拝とさんび」の中で、福音派の教派の参加に至った経緯を述べている。
井上牧師は「聖書のみ、キリストの十字架の唯一性・絶対性、直接伝道の優先性、等の強調点を持つ福音派が、この輪の中でうまく「兄弟」としてやっていけるのだろうか?」と半信半疑であった当時の様子を回想する。そして、参加教派の減少が目に付いた年の協議の中、とあるカトリックの神父が「これからは、他宗教との対話も念頭に置きつつ、より広がりのある音楽祭を目指すべきではないか?」と発言すると、「やはりこの手の集いに福音派が積極的に参加しようとすると、ムリが生じるという事なのか」、と期待していただけに、暗い気持ちになったという。
そこで井上牧師は「もしそのような諸宗教との和合という方向に進まれるのならば、それも一つの道かと思います。ただそうしますと、キリストの十字架の唯一性・絶対性を堅く掲げる私たち福音派の者たちは、残念ながら、この輪に加わる事はできなくなるでしょう。しかしそれはそれで、一つの神学的なスタンスだと思うので、皆さんでやって行かれれば良いでしょう。」と発言し、一瞬の間の悪い沈黙が流れた。
井上牧師がやはりこれで終わりか、と思った矢先、古参の教派の参加者が「福音派の皆さんが、そういう神学に立っておられるのなら、私たちもそれを尊重したく思います。兄弟が和合するための場なのですから、皆さんとの交わりをこそ、私たちはより大切にしたいと思います。」そして他の教派の参加者に、「皆さん、そうですよね?」と問うたという。
井上牧師はこれに感動したという。兄弟が一つであるために、福音派の譲る事のできない限界線を省み、譲ったためだ。同師によるとそれ以来キリストにある兄弟姉妹の一致というその美しい理念は、未だ揺らぎを見せていないという。教派の違い、神学の違い、実践の違いを乗り越えて共に三位一体の主を見上げて賛美するという基本スピリットに基づき、第31回の教会音楽祭も開催される。
今までの開催場所は第7回の日本聖公会聖パウロ教会、第25、26回のカトリック麹町教会聖イグナチオ教会主聖堂を除き、第30回まではほぼ全回カトリックの東京カテドラル聖マリア大聖堂であったが、第31回の開催地は日本福音同盟に所属するウェスレアンホーリネス教団の淀橋教会となる。