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み使いダニエル

(み使いダニエル)トモコのものがたり 星野ひかり

2020年12月10日18時43分 コラムニスト : 星野ひかり
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(み使いダニエル)リカのものがたり 星野ひかり+

都会にはクリスマスのイルミネーションがともり始めた頃でした。週末になると赤い帽子をかぶった群れが、駅の角に立ち寒さに身をすくめながらも賛美歌を歌っています。トモコは車の中で毛布にくるまり猫を抱いて、その歌を聞いておりました。

エンジンを止めた軽自動車の中は、毛布を3枚重ねても凍えた世界でありました。息は白く染まり、何枚重ねようとも毛布は冷え切っておりました。猫を冷やさないようにトモコはわずかな体温で、猫を温めておりました。後部座席には猫のトイレと自分の衣服、洗顔や銭湯の用意が所狭しと積んであります。

トモコが猫を連れて部屋を出て、もう1カ月がたとうとしておりました。

1カ月前に、それまで続けていた清掃の仕事を同僚とのいざこざで辞めました。仕事に行く必要がないのなら、ここにいる理由もない。そんなわずかな理由で、トモコは部屋を出たのです。それは旅行というには先が見えず、世捨てというには大げさなものでした。ただ、毎日同じことを繰り返してきたこの生活から離れることをトモコは望んだのでした。幸いしばらくは失業保険も振り込まれます。行ったこともない所に行ったら、見たこともない景色も見られるでしょう。そうしたら見えてくるかもしれないと思ったのです。自分がそれでも生き続けなければならない理由めいたものが。

40代半ばを過ぎても、トモコは結婚には縁がなく、一人で暮らして生きてきました。生き続けることに、自分一人とかわいい猫のチーちゃんを食べさせる以上の理由は見当たらず、チーちゃんが死んだら自分も死にたいというくらいの消極的な生き方しかしてくることができませんでした。

そんな生き方から抜け出したい一心で、結婚相談所に登録したこともありました。しかし家柄や能力、容姿をとっても秀でたもののないトモコは、つらい思いをするばかりでありました。男性たちの冷淡なまなざしはトモコの自信を一層奪ってしまったのです。歌を歌うことや自作のダンスが好きな陽気なトモコ、野良猫に餌をやり続けた優しいトモコ、食べ物のない人やおなかをすかせた動物たちのために祈り続けたトモコ・・・トモコには素敵なところがたくさんありました。でも、そんなところを見てくれる人はいなかったのです。

しかし、トモコの素敵なところもそうでないところも、全部ご存じで、その上でトモコを熱く愛している方もおりました。それは天の神様であり、また神様に遣わされたみ使いたちでありました。

トモコは人に評価されることは多くありませんでしたが、神様の目には、トモコがお母さんのおなかの中にいたときから、特別に見つめられていたのです。・・・神様はトモコを愛し、ご自身のために取り分けられ、まぶたが瞳を守るように、大切に育てられていたのです。だからこそ、トモコは力のなき者として生まれさせられたのでありました。神様の力なくしては生きていかれないほど弱い者としておつくりになるほどに、神様はトモコを愛していたのです。

み使いたちはいつもトモコと共におりました。ダニエルもその一人でありました。安穏と生きていられる日々が少なかった人生の傍らで、トモコを守るように見つめ続けていたのです。

「もろびとこぞりて歌いませり。主は来ませり、主は来ませり、主は、主は来ませり!」

駅前の賛美歌隊は凍えながらも明るく歌っています。トモコは悩みの少なかった学生時代を思い出しながらそれを見つめておりました。チーちゃんを抱きしめて一緒になって口ずさみました。「主は来ませり・・・」その歌のとおり、主はトモコのとってもそばにいることに、トモコはまだ気付いていませんでした。トモコが歌を聴いていることに気付いて、賛美歌隊の女の子は車に駆け寄り、トモコに小さな本を差し出しました。窓を開けてそれを受け取ると、あまりの寒さに耐えきれず、車のエンジンをかけて走り出しました。通気口から一気に暖かい風が吹いてトモコを温めてくれました。クリスマスに色づき始めた街並みを、祈るような気持ちで見つめながら車を走らせました。「どうか命のすべてが本当に安らかでありますように」。ビルの窓の一つ一つの明かりに向かってトモコはそう祈りました。

一見不遇のようであるトモコの人生にあって、祈りの心を持ち続けられたのは一種の信仰心によるものであったことでしょう。トモコは目に見えぬ力の守りを感じていました。どこかにいる‘神様’の存在を信じられていましたし、自分もその守りの中にいることに感謝をして生きてこられたのです。

それから何日か後のことでした。トモコはゴホゴホと咳をして眠れぬ夜を過ごしていました。凍えた夜が続いたせいで、肺の奥まで渇き切って、風邪をひいてしまったようでした。体は重く、体勢を変えようとするだけで意識が遠のいてしまいます。チーちゃんは心配そうにトモコを見つめてニャーニャー鳴きます。「大丈夫だよ」とチーちゃんを慰めて頬ずりをしあいました。大きな道の駅の駐車場に車を停めてもう3日を過ごしていました。

もうろうとしながら歌を口ずさんでおりました。「主は来ませり、主は来ませり・・・」

ふと、「主って誰かしら」と疑問が心をよぎりました。荷物の中をまさぐって、前に賛美歌隊の女の子からもらった小さな本を取り出しました。白い表紙に「新約聖書」と書いてあります。パラパラとめくってみると、一つの言葉がトモコの目に留まりました。

「わたしは世の光である。わたしに従ってくるものは、やみのうちを歩くことがなく、命の光をもつであろう」(ヨハネ8:12)。「命の光・・・」トモコはそうつぶやきながら、もうろうとする意識の深くに堕ちてゆきました。

遠のく意識の中で、神様の霊に包まれてトモコは心から安心しておりました。遠くから吹く樹木の香りのする風も、神様の霊に満ちているように感じました。

トモコの心にお優しい声が響きます。「私は在る」・・・。涙がこみ上げます。「やっぱりあなたはおられるのですね。私はそれをずっと信じてきました」。トモコは告白しました。

遠くから賛美歌が響いてきます。「主は来ませり、主は来ませり・・・」。まるで天使たちの歌のように、清らかな霊の風でできたような声があたり一面に響きます。(主は来られた・・・。)トモコはうっすらと目を開けました。道の駅には大きなクリスマスツリーがいろいろな電飾で輝いておりました。なぜでしょう。浮かれ切ったクリスマスのお祝いが、神様が来られた、そのことを喜んでいるかのように思えたのです。

世界に祝福の光があふれていることが感じられました。空は虹色の彩光を放って輝いて星々が涙に滲みます。この世界には神様の祈りが響いているような気がしました。

「もろびとこぞりて歌いませり、主は来ませり、主は来ませり、主は、主は来ませり・・・」。うろ覚えのその箇所だけを何度も口ずさんで、心が満たされてゆくのを感じました。

今までの人生の中で、トモコの年の分だけクリスマスはありました。一人っきりで過ごすのは恥ずかしい、そんな気持ちから無理にでも友達と集いあっていた頃もあります。でも、今年のクリスマスはどうしてでしょうか、心から神様をお祝いしたい気持ちがしていました。一人っきりでもチーちゃんと一緒に、冷たい車の中でケーキにろうそくを立てましょう。甘いクリームをチーちゃんにも一口分けてあげましょう。心から神様を祝って、歌を歌いましょう。きっと凍えた車の中も、光り輝くことでしょう。聖書を開いて口に出してみましょう。そこにはトモコの心をあまい蜜で包むような言葉が、きっとある気がしました。

そんなトモコを神様は抱きしめておりました。いとおしい娘を両手にしっかと抱いて、神様はトモコを愛していました。み使いたちはそれを見守り、歌を歌っておりました。

ここは都会から離れた田舎町の県道沿いの道の駅。中古で買った軽自動車はいろいろとガタもきています。その中にたくさんの荷物と一緒になって、毛布にくるまるトモコの姿は、この世の目にはとても寂しいものに映るでしょう。しかし、冷たく凍えた世界にあって、車中は神様の光に満ちていました。

本当の恵みとは、人の目には見えないとっても不思議なものなのです。

目が覚めると、ずいぶん汗をかいたようで、すっかり体は軽くなっておりました。トモコは下着を替えに道の駅のトイレに向かいました。衣服も替えて顔も洗って鏡を見ると、なんだかとてもはつらつとした自分がそこには映っていました。コーヒーショップは開店の看板を出しています。暖房を求めてコーヒーショップの中に駆け込みました。温かいラテとサンドイッチを注文して、太陽の降り注ぐ窓辺に腰かけラテをすすりました。太陽の光を浴びながら、心の芯から温まってゆくのを感じます。ふと、隣に座っている丸々太った男性が分厚い聖書を読んでいることに気付きました。トモコは少し恥ずかしそうに、自分も「新約聖書」を取り出しました。男性はそれにすぐに気付いて、トモコを意識し出しました。

2人が会話を始めるのに、それほど時間はかかりませんでした。なんでも男性は出張先から帰る途中だそうです。今朝の礼拝に間に合うように、車中泊で関東に向かっている最中だというのです。トモコは不思議と自分のことも話すことができました。一見恥ずかしいことも、誇りとしていることも、話すことができたのです。2人は時間を忘れて語り合いました。車の中のチーちゃんは陽だまりの毛布にくるまりながら、そんな2人の様子をみつめてあくびをしました。

「まだ旅を続けるの?」男性は聞きました。「旅というほどのものじゃないけど・・・」。トモコは恥ずかしそうに言いました。「旅というほどのものじゃないけど、もう少し走ってみようかな」。「どこまで?」トモコは恥ずかしそうに言いました。「もっと光の源が見えたなら、きっと帰れる気がするの」。男性はトモコの旅を祝福するためのお祈りをしてくれました。そして2人は連絡先を交換して、また会う約束をしたのです。

「よいクリスマスを」。そう言って男性は手を振りました。トモコもはにかみながら手を振りました。きっと2人はそれぞれに素晴らしいクリスマスを過ごすでしょう。神様が2人をそれは愛しておられるのですから。

トモコはこのクリスマスに、いったい何を見るでしょうか。トモコが求める「光の源」を見つけることができるでしょうか。きっと今度部屋に戻ったときには、今までとは違った新しい暮らしを始めることができる気がいたしませんか?

「わたしは世の光である。わたしに従ってくるものは、やみのうちを歩くことがなく、命の光をもつであろう・・・」

(どうかトモコの道のりがやみのうちになく、命の光に満ちあふれたものでありますように。)み使いたちはトモコをそう祝福して、今も守っているのですから・・・。

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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