続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(最終回)猫楽街からの手紙

2019年12月13日23時03分 コラムニスト : さとうりょうこ 印刷

「さようなら。またお会いできる日を楽しみにしています」。そう言ってマリヤは戸を閉めました。心は期待で満ちあふれておりました。「誰かの役に立てるのかもしれない」。そんな期待です。

今日、マリヤとお父さんの相談室には、ゆるせない友がいることに苦しんでいる婦人が訪れました。マリヤはイエス様のことを話すことができました。「その方は、私たちの罪を背負って、丘を登られ十字架にはりつけにされました。その方の手と足首には、太い釘が打ち込まれ、血潮が流されました。しかしその方は、自分が身代わりになり、人の罪を担うことをお喜びになられました。・・・ご婦人もたしかに苦しい思いをされたことでしょう。しかし、その友達の罪を、身代わりに担って差し上げることで、神様が私たちに示された愛を身に染みて知ることもできるのです」

婦人はイエス・キリストのことをもっと知りたいと言いました。そして、お父さんは聖書を開き、神様がこの世にお生まれになった日のことから話したのです。「まるで物語の世界のことのようね」。婦人は笑いました。「そうなんです。この世界は物語のように不思議で、物語のように美しい、神様の描かれた本の中にあるのです」。マリヤは目を輝かせて伝えました。「だったらどんなにいいでしょう」。婦人はほほ笑んで、聖書を借りてゆきました。マリヤの作ったローズマリー水のお土産も、喜んで受け取ってくれたのです。

「イエス・キリストを伝えたい」。客人の食器をさげながら、マリヤの胸に熱いものが込み上げました。お母さんは庭でラベンダーを摘んでいます。それを束にして日に干すのです。お母さんもさきほどの婦人の相談に耳をそばだてておりました。

「神様の描いた物語の世界・・・」。そう呟きながら汗をぬぐい、空を見上げました。羊雲が空一面を覆っています。まるでイエス様が羊たちの群れを率いて、ゆっくり進んでいるように見えました。「あなたたちはどこへ向かっているのですか?」そう問いかけて、自分も続きたいような気持ちになりました。

さて、実は昨日のことでした。マリヤ宛てに分厚い手紙が届いていたのです。住所は聞き慣れない「猫楽街」という町からでした。宛名は背徳の街の広場に住んでいたおじさんたちです。

マリヤは息せき切って自分の部屋に戻り、ドアを閉めると深呼吸をして、丁寧に封筒を開けました。その手紙を読み進め、マリヤは目を丸めて驚きました。なんでも、背徳の街の一角に、神様を信じる人たちの住む町があり、そこが「猫楽街」というそうなのです。

おじさんたちはある夜広場で暴漢に襲われ、ひどいけがを負ったというではありませんか。お金のないおじさんたちを診てくれる病院はなく、ほとほと疲れ果ててもう駄目だと思ったときに、猫楽街にたどり着いたそうです。その町の人の世話になり、運び込まれたのが廃墟のような病院だったというではありませんか。

しかし、廃墟に見えるのは外見だけで、中に入ると花や植物たちが生き生きと育てられており、花の甘い香りに満ちていたそう。そしてそこで、世話をしてくれたのが一輪の野花のように美しい女性であったというのです。その女性は全身に、そして顔中にもやけどの痕があり、それなのにどうしてか、皆が見とれるほどに、美しかったというのです。

やけどの隙間からのぞく目は黒糖のようであり、神の言葉を語る唇は蜜の湧き出る泉のようであり、傷の手当てをする手はまるで、天使の所作のように優しかったというのです。おじさんたちはその町で暮らす、と希望にあふれて書かれていました。

マリヤは手紙を読み終えると、手紙を胸に抱いて涙を流し、神様に感謝をしました。そして、なぜでしょう、ふと「猫吊り通り」で出会った、傷だらけの女性のことを思い出さずにはいられなかったのです。悪魔の花嫁とされながら、炎の中で、神の花嫁のように純白に輝いた女性のことを。(おわり)

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さとうりょうこ

1978年生まれ。埼玉県在住。2013年、友人の導きにより、日本ホーリネス教団久喜キリスト教会において信仰を持つ。現在、県内の障がい者施設で働きながら、加須市の東埼玉バプテスト教会に通い、2018年4月1日イースターに木田浩靖牧師のもとでバプテスマを受ける。フェイスブックページ「さとうりょうこ 祈りの部屋」。

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